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自動車のIT化---感性の領域へ(5)クルマの世界もピア・ツー・ピアに
出典:日経バイト2005年12月号
34ページより
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります) 図5 高度デマンド信号制御方式の原理
「信号に近づくクルマの台数が多く,また信号機とクルマの距離が近いほど青信号になりやすい」というアイデアが基本になっている。交差点では幹線方向と交差方向のデマンド(青信号への要望度)を計算し,デマンドの高いほうに優先的に青信号を割り当てる。既存の信号機では,前後の信号が青の場合,青になるように制御することで交通をスムーズにするアルゴリズムが組み込まれているが,高度デマンド信号制御方式を使うことで,信号同士の通信は不要になるという。 [画像のクリックで拡大表示]
位置情報の利用で信号がスムーズにここまで述べてきた車車間通信が実現し,クルマの位置や速度,方向などが交換できるようになれば,交通安全以外の新しいアプリケーションも生まれる。クルマの交通量に応じた信号機の制御やリアルタイムの渋滞予測システムだ。 前者の信号機制御には埼玉大学工学部電気電子システム工学科の長谷川孝明助教授が研究する「高度デマンド信号制御方式」がある(図5[拡大表示])。車車間通信でクルマがやり取りする位置情報を信号機が傍受し,制御に生かす。 この制御方式では,交差点において,どちらの方向にクルマが流れる要求が強いかを計算して,強い方に青信号を割り当てる。要求は,その方向に流れるクルマの数と信号機とクルマの距離から決定する。 「現在の信号機は朝の通勤時間,夜の帰宅時間,それ以外の時間など時間帯を決めて信号の長さを制御している。高度デマンド信号制御方式はリアルタイムに信号機を制御するので,実際の交通状況に応じた制御ができる」(長谷川助教授)という。従来の信号機制御方式と比較した場合,シミュレーションでは最大で停止時間が20%程度に減った。 なるべくクルマをスムーズに流そうと,既存の信号機で行われている前後信号機の状態を考慮に入れたシュミレーションも実施した。前後が青の場合は間の信号機もなるべく青にするという制御だ。結果は,前後の信号機の状態を考慮した場合としなかった場合で,交通のスムーズさはほとんど変わらなかった。つまり,信号機同士をネットワーク化する必要はなく,クルマと信号機が通信するシステムを導入すれば,交通がスムーズになるという訳だ。 リアルタイムの渋滞予測を実現車車間通信などで流れる位置や速度,方向の情報を収集し,これを使って渋滞予測をしようというのが,国立情報学研究所,デンソー,デンソーアイティラボラトリ,早稲田大学が開発した「フェロモン・モデルによる渋滞予測システム」である(画面[拡大表示])。 フェロモン・モデルとは虫などが危険やえさを仲間に伝えるために出す化学物質であるフェロモンをコンピュータで模擬したもの。このシステムでは(1)遅いクルマほど大量のフェロモンを出す,(2)フェロモンは進行方向に拡散する,(3)時間の経過とともに一定割合ずつ蒸発していく——という三つをモデル化した。つまり,遅いクルマが多く集まる場所ほど,フェロモンが大量に放出され,渋滞になりやすいというモデルだ。 このモデルの有効性を調べるために,東京都の吉祥寺・三鷹駅周辺道路の実データを用いて計算したところ,VICS搭載のカーナビと比較して,目的地への到達時間を平均8%程度短縮できたという。「今回のシステムはアルゴリズムが簡単でほぼリアルタイムで処理が可能」(デンソーアイティーラボラトリ 研究開発グループの岩崎弘利プロジェクトマネージャー)。例えば,車車間通信で流れるデータをカーナビに取り込み各車ごとに計算できる。 「過去のデータによる学習やドライバの好みによって各種パラメータを変えていけば,自分だけのオリジナルの渋滞予測が実現する」(国立情報学研究所/東京大学の本位田真一教授)。 連載新着連載目次へ >>
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