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 1900年パリ万博の展示場だったグランパレの天井から金具が落ちたのは93年後。修復後、新装なった姿は2005年9月17日に公開された。外は石だが内部構造のすべてはガラスと鉄。その屋根の面積だけでも1万3500平方メートルある。展示空間だから内部の建築構造に関心がある市民はすくないはず。だが会場をとりまく行列が数時間も続いた人気は、屋根の美しさを強調するために仕掛けた2つの球ゆえだった。それは16世紀末ルイ14世に献上した直径約5メートルの地球儀と天球儀。

 20世紀になって一度だけ公開された幻の球が観客を動員した。会場では星が降るようなシンセサイザーの音楽が響き、2列に向き合って設置された鏡を覗き込んでアッと驚く。鏡に映る風景はガラスと鉄とパリの青空。球の上下に置いた中央の鏡の一方で青い地球と屋根そして青空を眺め、もう一方の鏡で星座、屋根、青空。陽が沈むと同時に始まる光のショーは寝椅子で楽しむ。何もない広大な空間にかかる高さ45メートルの屋根を見るためにうつむく展示とは魔術だ。