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 タバコをめぐるキャンペーンは不思議なデザインを育てる。偶然だが喫煙派も禁煙派も灰皿をキャンペーンの道具にした。タバコを売ろうとするアメリカのメーカーは、禁止された広告の代わりに、商品名を大きく印刷したステンレス製の灰皿を販売店に置き始めた。一方、禁煙を推進するパリ市も公園の片隅に灰皿を置いた。

 子供が隠れて遊べるほど大きなテラコッタ風のプラスチックの鉢は、パリの観光名所ボージュ広場に4個ある。公園の中心に置かれた鉢に木が植えてあるのかと近寄れば、中心の板の頂点に禁煙サインがあり「どうぞタバコの火を消してください」のメッセージ。鉢の高さの8分目まで入っている白い砂にはすでに吸い殻があった。

 巨大な灰皿は、樹木が幾何学的に並ぶ緑豊かなこの公園の景観に溶けこんで美しい。消えなかったタバコの煙がもうもうと立ちのぼることもなく、雨が降っても水は自然に地面に吸い込まれ、時々吸い殻を篩いですくって掃除するだけ。この灰皿は、メンテナンスが楽なだけではない。大きすぎる鉢のユーモアに笑いながら喫煙者の手から吸いかけのタバコを奪う。