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 つい最近までブリキのバケツはどの家庭にもあった。だが薄い鉄板に錫をメッキしたブリキは日常から消えてしまう。1980年代に、農家の納屋から引っ張りだしたばかりの錆びたバケツ、牛乳入れ、ワインクーラーなどが、花瓶、小物入れとしてヨーロッパの古物店にならんだ。やがて小さなバケツなどがインテリア小物として日本にも現れ、ブリキは蘇った。 Radis et Capucine(ラディ エ キャプシーヌ)社は創業1988年とまだ新しいフランス企業。種と球根のキットを専門に販売する。種子を蒔き球根を植える前から、店頭で花盛りを想像させるアイディアとパッケージデザインが見事だ。

 中には種子3袋、腐葉土1袋、白玉石、木の名札3枚と平凡だが、パッケージがそのまま楕円の鉢になるところがユニーク。鉢が土器でも木でも評価は違っただろう。金属であるのに、チープで暖かみのある光りを放つブリキの素材感に、若者は魅せられた。量産品であるのにふぞろいな表面と手作り感が心地良いのだ。古さを生かすデザインが好評なのは、われわれが変化の早さに苛立っているからだろう。