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 世界を震撼させたエイズは、致命的な病から遠くなりつつある。だが患者・感染者の累計は全世界で5000万人を越えた。コンドームの利用が有効な予防手段であると分かっていてもその普及は難しい。フランスではポスター、雑誌、テレビなどのメディアを使って予防キャンペーンをくり返してきた。2003年、パリ市は「名所めぐり」のポスターと葉書で市民に呼びかけた。だがそのグラフィズムにはかつての輝きがない。

 エイズ情報センターは「エイズにかかったデザイナー達が命がけで自らキャンペーンに協力した時代には優れたポスターがありました。でも彼等の多くは亡くなり、生き残った人々は治療の効果があってキャンペーンから離れました。嬉しさ半分残念半分ですね」と語る。とはいえ思わず笑ってしまうポスターや葉書でエイズ予防を呼びかける手法はさすがだ。愉快なグラフィズムで冷酷な現実を広報するには研ぎすまされた感性が要求される。ムーランルージュが一番人気だったパリ「名所めぐり」は、これナーニと問いかけ、あっそうか、と口元がほころぶ。