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 150年の歴史を誇るルイ・ヴィトン。それを記念してシャンゼリゼ店は2003年11月15日の夕方から約1年間休業にはいった。より充実したサービスを提供するための改装が目的。12月、クリスマスプレゼントの買物に出たパリジャンは店の前でガリバーの「巨人の国」にいるのではないかと疑った。アパート5階分の高さもある巨大な仮囲いがあったから。しかもそれはルイ・ヴィトンのリアルな旅行鞄。しかも金具や縫い目もリアル。

 パリの歴史地区での工事は多い。その仮囲いのデザインは例外なく秀逸だ。マドレーヌ寺院ではテント地に改修部分の柱や装飾そして屋根を描き、工事中を楽しませる工夫をしたり、仮囲いをそのまま芸術的なインスタレーションとして機能させる。都市の景観保全のためパリの建築基準は厳しい。たとえ人眼にふれない中庭に面したアパートの窓の改修でさえ、景観保全を証明する義務がある。ましてやシャンゼリゼに面した建物。短期間であってもルイ・ヴィトンは「ガリバー企業」に相応しい仮囲いのデザインで1年後の姿を通行人に夢みさせた。