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 17世紀の資料を求めてインド(マドラス/現チェンナイ)に行った。町の図書館にコピー機はなく、電燈も日暮れをまつほど都市のインフラは発展途上。そこで日本向けソフトウエアを企画する青年は、彼が勤務する会社には1万人(プログラマー7000人)の従業員がいると語った。

 モダンな町の大通りにはマックもマークス・アンド・スペンサーも並ぶ。その大通りから直角にのびる道で眼を見張った。大型車輌が目の前で解体されている。道を200メートルほど進むうちに解体される車輌は次第に小型にやがて家電製品そして生ゴミの分別へ。解体作業場の前にはリユース工房とショーウインドーが軒を連ねる。ラジエーターの薄い部品を一枚また一枚と整える職人の指は繊細で正確。

 19世紀まで世界の綿織物の主役だったインド。イギリスはその職人の指を切りインドを綿花だけの産地にした。消えたはずの優れた職人の当時の技とセンスはいまここに生きているのではないか、と胸が騒いだ。世界一のIT産業と路上の解体工場。この風景こそ最先端技術を担う社会の縮図なのだ。