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 座席指定の切符を手にしてプラットホームに登る。ところが指定車輌の停車位置は分からない。大きな駅では同じホームを異なる編成の列車が利用する。だから頭上のプレートで列車の名前と車輌番号が分かっても、指定車がその右か左かは1車輌分歩いて判断する。もちろん事前に調べてもいいが、ゆとりがない出張だったら無理だ。ところが、初めて利用するホームでも目的の車輌入口がすぐ分かるデザインを発見した。

 フランス、ベルギー、ドイツを結ぶ特急列車タリスがそうだ。車輌はTGVと同じだが、形は丸くシンボルカラーは地味な紫。タリスの発車時刻の少し前になるとアルミのポールにつけた旗を編成車輌の数だけ駅員がプラットホームに点々とさして歩く。高さ3メートルほどの逆三角形の旗はシンボルカラーの紫。その上にタリスのシンボルと車輌番号が黄色で大きく染め抜かれている。数字の高さと配色の巧みなデザインにさそわれて乗客は目的位置を確かめる。家庭の玄関に生けた花以上に来客を浮き浮きとした気分でもてなす安心のデザインだった。