[画像のクリックで拡大表示]

 左手は客、右手は金を招くという「招き猫」は江戸時代に始まった日本発のデザインだった。いつのまにか国境を超え、アジアはもちろんヨーロッパのショーウインドウにさえ姿を見せる。

 不況になると右手の猫が増え、十年以上も不況が続けば、かつては嫌われた両手「お手上げ」猫さえ金も人も招く「欲張り猫」として定着した。しかも「お手上げ」に七福神までついた「招き猫」さえ登場。人、金、幸運・立身出世・商売繁昌・無病息災・家内安全、両手にあまる人の夢と欲望をたった一匹の猫に託したそのデザインは、欲張りな先端技術を積み込んだ器機に似ている。

 すべてを使いこなせないのを承知しながら、ボタンの数が少なくては販売成績にかかわる、と計算機に始まり電化製品、コンピュータ、携帯電話へ、と加速した欲張りデザインの原点は可愛い「招き猫」でも確認できるようだ。手に届くあらゆる夢をデザインに取り込む日本的な表現は、まだ続くにちがいない。