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 東京、ビール会社のビル屋上にたなびく金色の雲で日本での知名度をあげたフランスのデザイナー、フィリップ・スタルクは54才。2003年春に「大回顧展」を開いた。今でも200のプロジェクトを同時進行している、と豪語するスタルクのポンピドー文化センターでの回顧展には、毎日3000人の観客がおしよせ非難と絶賛があいまった。

 展覧会だが展示作品はゼロ。かわりにプロジェクションされた作品写真と彼自身の顔が作品の背景を語った。その記念に60年代の学生運動から生まれた日刊紙リベラシオンは彼に紙面デザインを依頼した。タイトル、写真、テキストのレイアウトを任せられた彼は、体制に反抗する力を赤で、全ページにタイトル、写真、スローガンの三本の帯びを流した。テレビのニュース専門番組に似せて。

 デザイナーにたった一日だけでも紙面を任せる勇気ある新聞社が日本にあるだろうか。内容は当然だが報道のデザインとはいかにあるべきかを問い直すチャンスでもある。