受信メールをチェックすると,大量の広告メールなどが届いていてうんざりすることがあります。このようなメールはスパム・メール,あるいは迷惑メールと呼ばれます。

 スパム・メールの内容はさまざまです。単純な広告目的のダイレクト・メールのほか,「このメールを受け取った人は5人以上の知人に同じ内容のメールを送らないと不幸になる」といったような不幸の手紙,ウイルスのデマや募金の募集などのたぐいもあります。このようなスパム・メールを受け取らないようには,できないのでしょうか。

法律で取り締まるには限界

 日本では,「特定商取引に関する法律施行規則」という法律で,受信者の事前承諾を受けずに一方的に送信するメールの件名には「未承諾広告※」という言葉を冒頭に付けることが義務づけられています。これに違反した場合は罰則(罰金または懲役)を受けます。そこで,メール・ソフトのフィルタリング機能を使って,この言葉が件名に含まれているメールは自動的に削除するという手が考えられます。

 しかし,この法律を守って送ってくるスパム・メールはほんの一部です。そもそも,海外から送ってくるスパム・メールを国内の法律だけで取り締まるのは難しいでしょう。法律は作られましたが,すでに形骸化してしまっているようです。

 そこで,最近ではスパム・メールを自動削除するツールが出回っています。こうしたツールを使えば,受信したスパム・メールを自動的に削除してくれます。自動削除ツールは,過去にスパム・メールを送った送信元アドレスのブラック・リスト,メールの件名や本文中の特定の語句を含むものをスパム・メールだと判断して自動的に削除します。

 ただ,このツールにも限界があります。スパム・メール業者は,あの手この手でこのフィルタリングをすり抜けようとするので,ツールを使ってもすべてのスパム・メールを削除するのは難しいでしょう。また,すべてのスパム・メールを削除しようとすると,正規の受信メールをスパム・メールと誤認してしまう可能性もあります。

下手に相手にすると痛い目に遭う

 では,スパム・メールの送信元に受信拒否や抗議の連絡をするのはどうでしょうか。結論から言うと,お勧めできません。

 スパム・メール送信業者は,スパム・メールを送信するためのアドレスのリストをほかのスパム・メール業者へ転売して利益を得ています。抗議や着信拒否のメールを業者に送るということは,そのメール・アドレスをユーザーが実際に利用しているのだとバラしているようなものだからです。

 このようなアドレスは,スパム・メール送信業者の間では,とくにアクティブなメール・アドレスとして別リストにランク・アップされ転売される可能性があります。こうなると,抗議先の業者からのスパム・メールはなくなるかもしれませんが,ほかのスパム・メール送信業者から以前にも増して大量のスパム・メールが送られてきたりします。

 また,送信元アドレスが実在しなかったり,偽装されている場合もあります。スパム・メール業者は自らの身元がばれないように,送信元の情報を変えたり,管理の甘い他人のメール・サーバーを利用しながらスパム・メールを送信するのです。

 結局,最も有効な対策は,まず自動削除ツールなどを使って防ぎ,そこからすり抜けたものはユーザー自身が対処するしかありません。