ネットワーク経由で配信される動画といえば,これまでは短いニュース映像や映画の予告などの宣伝用コンテンツが主で,今ひとつ魅力に欠けていた。しかし最近は,懐かしいアニメや最新の映画などが丸々1本見られるサービスが続々と登場している。そこで今回は,これら動画配信サービスのしくみを探ってみた。
「今年は奮発して液晶テレビを買おう」——。待ちに待ったボーナスを手に意気込む私。ねらいは東芝が今年10月に発売した「Z1000シリーズ」だ。
カタログを見ていると,デスクが声をかけてきた。「なんだ,新しい液晶テレビか」。それに対し,「このテレビは普通のテレビ番組のほかにブロードバンド回線で配信される動画も見られるんですよ! 」と私が答える。
Z1000シリーズは,ぷららネットワークスが提供する動画配信サービス「4th MEDIA(フォースメディア)」のコンテンツを受信する機能を内蔵している。自宅に引き込んだブロードバンド回線を家庭内ネットに接続し,そこにLANケーブルでZ1000をつなぎ込む。すると,ネットワーク経由で配信される動画をZ1000に映せる(図1[拡大表示])。これで,パソコンだけでなく,テレビでもさまざまな動画を見られる。
私の説明を聞きながら,カタログを眺めていたデスクがふいに言った。「でも,回線がNTTのBフレッツじゃないとダメらしいぞ*」。
「ええっ!」と驚いてカタログをのぞき込むと,確かに利用条件にそう書いてあった。我が家はまだADSL。フレッツに乗り換えないと使えないの…?
テレビで見るか,パソコンで見るか
最近よく見るパソコン向けの動画配信サービスは,接続する回線に制限はない。もしやサービスによって条件が違うのか? 気になって調べてみると,動画配信サービスはテレビ向けとパソコン向けに分かれること(図2[拡大表示])と,テレビ向けサービスは回線やプロバイダに制約があることがわかった(表1[拡大表示])。
テレビ向けとパソコン向けのサービスではほかにも異なる点がある。例えば,テレビ向けのサービスを受信するにはセットトップ・ボックス(STB)*という装置をブロードバンド回線とテレビの間に設置する必要がある*が,パソコン向けサービスには要らない。
コンテンツの配信形態にも違いがある。動画配信にはVOD*と放送型の二つの形がある。VODは,ユーザーが見たいときに見たいコンテンツを呼び出す形態で,家に居ながらレンタル・ビデオを利用するイメージ。一方の放送型は,チャンネルごとに決まったタイムテーブルに沿って番組を配信する形態で,CATVに近い。
テレビ向けでは,VODと放送型の両方を用意するサービスがほとんどなのに対し,パソコン向けは,VODだけというサービスが多い。放送型の配信がある場合も,チャンネル数が少なかったり,放送時間が限定されていたりする。
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