マイクロソフトは2006年末に,次期クライアントOS「Windows Vista」を出荷する予定だ。本連載「一足先に知るWindows Vista」では,Windows Vistaの「評価版」を基に,Vistaの新機能を分かりやすく紹介する。一般ユーザーが最初に入手できるWindows Vistaの評価版は,2006年夏に公開される予定の「ベータ2」である。現在は「MSDN」の会員などでなければ評価版を入手できない。「ベータ2」が出るまでは,本連載で「一足先に」Vistaの概要を学んで頂きたい。

 第1回の今回は,Windows Vistaが登場することによって,ユーザーにどのような利点が生じるのか,何が期待できるのかを紹介する。読者の中には「Windows OSの機能はWindows XPで十分」と思っている方も少なくないだろう。確かにWindows Vistaになっても,Windows 3.1がWindows 95になったときと違ってGUIが大変化するわけではないし,Windows 9xがWindows NT(NT/2000/XP)になったときと違って,システムが劇的に安定するようになるわけでもない。しかしだからといって,Windows Vistaに何も期待できないと考えるのは早計である。

5年ぶりとなるOSのメジャー・バージョンアップ

 Windows Vistaは,2001年11月に発売されたWindows XP以来,5年ぶりとなるメジャー・バージョンアップである。発売から4年が経過したWindows XPは,最新のハードウエアやセキュリティ上の脅威に対応できないなど,時代遅れになっている部分も多い。この5年間に出た最新ハードウエアに対応したり,セキュリティが強化されたことだけでも,Windows Vistaに十分な価値があると言える。

 今となっては想像もできないが,2001年11月に発売された「無印」のWindows XPは,137Gバイト以上の容量があるハードディスクやUSB 2.0,Bluetoothに標準で対応していなかった。137Gバイト以上のハードディスクとUSB 2.0に対応したのはWindows XP Service Pack 1(SP1)であり,Bluetoothに対応したのはWindows XP SP2のことである。Windows Vistaであれば,さらにハードウエアのサポート状況が改善する。シリアルATAにも標準で対応するし,PCI Expressで利用できる機能も増える(表1)。

さらに強化されるセキュリティ機能

 Windows XPが登場した2001年と比較すると,ネットワーク環境やそれに関連する社会状況も大きく変化した。特に,セキュリティを取り巻く状況の変化は激しい。2001年当時はブロードバンド環境も普及していなかったし,「ウイルスやスパイウエアによる情報漏えい」「フィッシングによる金銭詐取」が新聞紙上をにぎわすこともなかった。

 Windows Vistaには,スパイウエアの侵入を難しくする機能や,ユーザーをフィッシングから守る機能,ハードディスク全体を暗号化することで情報漏えいを防ぐ機能などが実装される。セキュリティの機能強化は,大いに期待できるだろう(詳細は第2回以降で取り上げる)。

3次元CGでより使いやすく

 Windows Vistaでは,ユーザー・インターフェースも強化される。Windows Vistaに搭載される「Windows Presentation Foundation」(開発コード名:Avalon)を利用すれば,3次元CGをユーザー・インターフェースに使ったアプリケーションを,XMLベースのコードを使って簡単に作成できるようになる。またWindows Vistaの新しいシェルである「Aero Glass」は,ウインドウを斜めに立たせて表示するといった,3次元CGを使ったユーザー・インターフェースを実装する。Webアプリケーションでは実現が難しいような,表現力に富んだアプリケーションを容易に開発できるようになる。

 マイクロソフトは「業務アプリケーションであっても,3次元CGを使ったユーザー・インターフェースを備えた方が,生産性向上を実現できる」と述べている。開発者会議などでは,3次元CGを多用した業務アプリケーションの実例を度々紹介している。本連載ではこういった取り組みについても,紹介していく予定だ。