■ランキングの上位
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「e 都市ランキング2005 」(100 点満点)の順位算出方法
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首位の西宮市のサイト<br>ランキングの首位になった兵庫県西宮市のWebサイト。2004年12月に全面的にリニューアルして、使い勝手を高めた
首位の西宮市のサイト<br>ランキングの首位になった兵庫県西宮市のWebサイト。2004年12月に全面的にリニューアルして、使い勝手を高めた
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■市区町村の平均得点&lt;br&gt;市・区の平均得点の55.0点に対し、村の平均得点は32.3点。自治体の規模が小さいほど、各分野の情報化が遅れる傾向にある。予算規模や職員数などの面で、小さな自治体は不利になるためだ。特に、「情報・サービス」「アクセシビリティ」の分野は、規模による自治体の格差が大きい
■市区町村の平均得点<br>市・区の平均得点の55.0点に対し、村の平均得点は32.3点。自治体の規模が小さいほど、各分野の情報化が遅れる傾向にある。予算規模や職員数などの面で、小さな自治体は不利になるためだ。特に、「情報・サービス」「アクセシビリティ」の分野は、規模による自治体の格差が大きい
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■電子申請に対応する自治体が増加&lt;BR&gt;インターネット経由で行政手続きを行う「電子申請」に対応する自治体が増えつつある。25.6%の自治体が「公共施設の予約「図書館の蔵書貸し出しの予約」など、何らかの電子申請サービスを提供している。画面は、岩手県水沢市が提供している市民病院の受診予約サービス
■電子申請に対応する自治体が増加<BR>インターネット経由で行政手続きを行う「電子申請」に対応する自治体が増えつつある。25.6%の自治体が「公共施設の予約「図書館の蔵書貸し出しの予約」など、何らかの電子申請サービスを提供している。画面は、岩手県水沢市が提供している市民病院の受診予約サービス
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■携帯電話向けサイトを開設
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■災害発生時は自治体サイトへのアクセスが急増&lt;BR&gt;昨年10月23日に発生した新潟県中越地震の情報を伝える新潟県のWebページのアクセス数の推移。災害発生時には自治体サイトへのアクセスが急増する
■災害発生時は自治体サイトへのアクセスが急増<BR>昨年10月23日に発生した新潟県中越地震の情報を伝える新潟県のWebページのアクセス数の推移。災害発生時には自治体サイトへのアクセスが急増する
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■自治体サイトには「Webガバナンス」が必要
■自治体サイトには「Webガバナンス」が必要
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 ランキングの首位になった自治体は兵庫県西宮市。住民サービスや、個人情報保護の取り組みなど、情報化のさまざまな分野で、自治体の規模や地域による格差が生まれている。

 自治体へのアンケート調査を基に、全国市区町村の情報化進展度を比較する本誌恒例の「e都市ランキング」。今年は、2091の自治体から協力を得て、ランキングを算出した(回答率は87.2%)。

 ランキングの首位は、兵庫県西宮市(44.6万人)。昨年の51位から、大幅に順位を上げた。以下、岩手県水沢市(6.0万人)、長野県茅野市(5.5万人)など、昨年も上位だった自治体が続いた。

 調査分野は、右ページにまとめた5分野。各分野の評価項目は、自治体が情報化を進める上で基本となるものを選んでいる。また、各分野とも、自治体の最近の状況を踏まえて評価項目を見直している。

 例えば、情報化の進展に伴って個人情報流出の危険性が高まっていることから、セキュリティ対策に関する設問を拡充。電子申請サービスや防災対策についての質問も増やした。

 5分野の中で、最も配点を大きくしたのは「情報・サービス」。ここでは、インターネット経由で住民に役立つ情報・サービスを提供しているかどうかを評価している。

 「アクセシビリティ」(アクセスの容易さ)は、高齢者や障害者などを含むさまざまな住民が利用できるWebページを提供しているかを評価。評価項目は、Webページのアクセシビリティに関するJIS(日本工業規格)の基準を基に定めた。

 調査対象は、2005年5月末時点の市町村に東京23区を加えた2399自治体。回答を寄せた2091自治体の内訳は、市・区が700、町が1112、村が279となっている。

全庁横断の作業部会を作りアクセシビリティ対策を推進

 首位の西宮市は、多方面で情報化を進めており、5分野すべてで高い得点を挙げた。Webサイトは、昨年12月にリニューアル。リニューアルに当たっては、全庁横断の30人規模の作業部会を組織して、アクセシビリティ対策に取り組んだという。こうした取り組みで、アクセシビリティ分野の得点が、昨年の2.0点から9.8点に増加。順位も、昨年の51位から一気に上昇した。阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた西宮市は、独自の被災者支援システムを整備するなど、防災対策にも積極的だ。

 2位の水沢市は、市民病院の受診予約や公共施設の利用予約を自宅のパソコンでできるようにするなど、インターネット経由の行政サービスの充実に注力。証明書の自動交付や健康情報の照会など、住民基本台帳カード(住基カード)の独自利用にも取り組んでいる。3位の茅野市(5.5万人)は、Webサイトで提供している豊富な情報やサービスが特徴だ。NPO(非営利組織)と共同で、地域情報サイトも運営している。

 町の首位は、全体で32位の北海道長沼町(1.3万人)。村の首位は、全体で177位の長野県原村(0.8万人)となった。

 自治体の規模別に、総合と5分野の得点をまとめたのが下の図だ。自治体の規模が小さいほど、情報化が遅れる傾向にある。これは、情報化を推進するには、予算規模や職員数などの面で、小さな自治体が不利なためだ。

 今回の調査で回答を寄せた自治体のうち、人口が3万人未満の自治体は65.5%を占めている。ところが、このなかでランキングの100位までに入ったのは、長沼町、46位の愛知県清洲町(1.9万人)、76位の長野県辰野町(2.2万人)だけだった。

 全国では、大規模な市町村の合併が進んでいる。調査対象となる自治体の数は、昨年の3123自治体から2399自治体に724も減った。この大部分は、規模の小さな町と村だ。今後も市町村の合併は進み、2006年3月末には自治体数が1800程度にまで減る予定だ。

 合併を目前に控えて、対象自治体の多くは大規模な情報化投資やWebサイトのリニューアルを控える例が目立った。このため、一時的に合併が、情報化にブレーキをかける傾向が見られた。

 しかし、合併により数万人以上の規模となる自治体が増えることで、今後は取り組み次第で、全国でトップクラスの情報化を達成できる自治体が増えそうだ。

 自治体の回答から、情報化の最近の傾向も浮かび上がった。その一つは、インターネット経由で行政手続きを行う「電子申請」に対応する自治体が増えていることだ。

25.6%の自治体が電子申請サービスに対応

 今回の調査では、25.6%の自治体が「公共施設の予約」「図書館の蔵書貸し出しの予約」など、何らかの電子申請サービスを提供中。2005年度中に、8.9%の自治体が新たに電子申請サービスを始める予定だ。

 電子申請サービスの提供も、自治体の規模が大きいほど進んでいる。市・区では、40.7%がサービスを提供済み。2005年度には11.3%が新たにサービスを始める予定だ。

 自治体の行政手続きのほとんどは、住民が窓口に出向く必要がある。このため、電子申請サービスの提供が広がれば、住民の利便性向上が期待できる。

 2004年1月の「公的個人認証サービス」の開始も、電子申請サービス拡大の追い風になっている。公的個人認証は、国と自治体を結ぶネットワークと住民基本台帳カードを利用して、インターネット経由で本人確認できるようにする仕組み。これによって、厳密な本人確認を必要とする「住民票の写しの交付」「納税証明書の交付」などのサービスをインターネット経由で提供できるようになった。

 携帯電話向けのサービスに乗り出す自治体も多い。調査では、34.7%の自治体が携帯電話向けのWebサイトを開設。ゴミの収集日などの情報を携帯電話向けのメールで配信する自治体も増えている。

 Webサイトやメールを、住民の安全を守る手段として積極的に活用しようという動きも出てきた。左ページ下のグラフは、昨年10月に発生した新潟県中越地震の情報を伝える新潟県のWebページのアクセス数の推移だ。地震発生後、Webページへのアクセスが急増。災害発生時の情報入手先として、住民が自治体サイトに大きな期待を寄せていることが分かる。

3つの取り組みを進めてWebガバナンスを実現

 自治体サイトが抱える課題は多い。例えば、情報やサービスが増加した結果、構造が複雑になり、使い勝手が悪化しているWebサイトが少なくない。組織ごとに縦割りでWebページを作成している自治体のサイトでは、「ページによってデザインが異なる」「関連する情報が多くのページに分散している」といった問題が生じている。

 また、投稿ページやメールで受け取った個人情報の取り扱いについて記載がない自治体も多い。住民が安心して利用できるWebサイトにするには、こうした情報をきちんと提供しなければならない。

 このほか、観光振興や地元への企業誘致などを進めるには、Webサイトを利用して、自治体ブランドの向上を図ることも重要だ。

 個々の部署がバラバラに行動していては、これらの課題を解決するのは難しい。自治体サイトを統一的に管理する「Webガバナンス」が必要になる。Webガバナンスを実現するには、上図に示した、「体制の整備」「ルールの策定」「職員の意識向上」の3つの取り組みを進めなければならない。

 Webガバナンスを進めることで、サイト全体のデザインの統一やアクセシビリティ対策が進み、住民にとって使いやすいサイトになる。また、Webサイトをさまざまな政策に生かすことが容易になるので、サイト価値の向上にもつながる。

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