Webサーバーやメール・サーバーという言葉は,日経NETWORKでもいたるところで目にします。Webアクセスも,電子メールも,クライアントがサーバーに要求を出して,サーバーがそれに答える「クライアント・サーバー・モデル」というしくみを利用しています。

 私たちがパソコンでWebページを見る場面に当てはめれば,普段使っているWebブラウザがインストールされているパソコンが,要求を出すクライアントということになります。では,通信回線の向こう側にあるサーバーとは,どのようなものなのでしょうか。

 IT系のニュース・サイトなどを見ると,「サーバー向けマシン」というコンピュータが紹介されていたりします。高速なCPUを複数搭載しているなど,高性能でいろいろな付加機能が付いているので,価格も非常に高価なものがあります。サーバーとは,私たちが日常使っているパソコンとは違う,特殊なコンピュータなのでしょうか。

役割を表す「用語」

 特殊なコンピュータがサーバーだとする考えは,正しくありません。サーバーとは,ネットワークの中でのコンピュータの役割を表す用語にすぎません。

 サーバーとは,クライアントからの要求を待ち受け,要求があったら適切な応答を返す役割を持ったコンピュータのことです。この役割を持つものは,ソフトウエアとして具現化されているのが一般的です。つまり,サーバー・ソフトがインストールされたコンピュータがサーバーなのです。自作のパソコンだろうと,古い型落ちのパソコンだろうと,こうした役割を果たしていればサーバーといえます。

 実際,最近では自宅でWebサーバーやメール・サーバーを立ち上げる人が増えてきました。このような人たちは,パソコンを買い換えるときに,古くなったパソコンにサーバー・ソフトをインストールしてサーバーとして使う場合が多いようです。

 また,一つのパソコンにクライアントとサーバーが混在している場合もあります。Webサーバー・ソフトがインストールされたパソコンに,Webアクセスのクライアント・ソフトであるWebブラウザが入っているケースは多いでしょう。同じパソコンが一方でサーバーの役割を果たしながら,他方でクライアントとして動いていることは,よくある話です。

 また,一般にクライアントとサーバーの通信は,異なるパソコン同士で通信回線を通して行われますが,同じパソコンの中にある別のソフト同士の通信でもクライアントとサーバーの関係は成り立ちます。このように,クライアントとサーバーは,あまりハードウエアの性能やハードウエアそのものにしばられるようなものではありません。

 では,「サーバー向けマシン」は,どうして普通のパソコンよりも高いのでしょうか。実は,このようなコンピュータは,普通のパソコンよりも高性能なものを指す場合が多いのです。

高ければサーバーというわけじゃない

 企業が自社のサービス提供のために使うサーバーは,個人が普通に使うパソコンより,大量のアクセスをさばく必要があります。個人のパソコンのように,ひんぱんにハングアップしてメモリー上のデータが消えてしまったら,ビジネスが成り立たなくなってしまいます。そこで,サーバー向けのコンピュータは,大量のアクセスにも耐えられるよう,CPUやハードディスク,ネットワーク・インタフェースや電源などを複数装備するなどの対策が施されています。

 このような高性能機でも,当然クライアントとして使うことは可能です。サーバーだからといって,特別なハードウエアを装備している必要はないのです。