図  仮想化支援機構「Virtualization Technology(VT)」の効果<BR>総じてVT有効時は無効時より3%前後性能が伸びている。値は実マシンを1としたときの相対性能である。米Futuremark社の「PCMark05」の各テストを実施して測定した。
図 仮想化支援機構「Virtualization Technology(VT)」の効果<BR>総じてVT有効時は無効時より3%前後性能が伸びている。値は実マシンを1としたときの相対性能である。米Futuremark社の「PCMark05」の各テストを実施して測定した。
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 仮想化の処理をハードウェアで一部肩代わりする支援機構を実装したCPU搭載機で動く仮想マシンの性能は,実マシンのレベルに到達している。米Intel社の仮想化支援機構「Virtualization Technology(VT)」対応CPU搭載機の検証で,その効果が明らかになった。

 VTは,複数の仮想マシンを同時実行する際のスイッチングと特権命令の検知を支援する機構。仮想マシンで動くOSが発行する特権命令を検知する作業は,仮想マシンのオーバーヘッドの多くを占める。VT対応CPUとその機構を利用するソフトを組み合わせれば,仮想マシンの性能が上がるとされている。そこでVT対応を予定する米VMware社の仮想マシンソフト「VMware Workstation 5.5」の製品候補第2版(製品化は2005年内の予定)を使い,効果を測定した。

 ベンチマーク・ソフトには,米Futuremark社の「PCMark05」を使用。演算性能,メモリー・アクセス性能,グラフィックス描画性能,ファイルの読み書き性能を測定した。測定環境は,VT有効の仮想マシン,VT無効の仮想マシン,そして実マシンの3種類。測定機が搭載するVT対応CPUの動作周波数は3.6GHz。メモリーは1Gバイトである。仮想マシンのメモリーに256Mバイトを割り当て,実マシンのメモリーは256Mバイトに制限して測定した。

画面描画の一部で最大約6割の高速化

 結果を見ると,VT有効時の性能がVT無効時に比べて3%前後高い。中でもグラフィックス描画性能の改善が目立つ。特にWindows Media Video形式のファイル再生では,VT有効時に59%も値が伸びた。そのせいか,VT無効時には引っかかるような感じがあったマウスカーソルの追従やウインドウ描画が速くなっているのが体感できる。

 実マシンとの相対値に着目すると,ファイルの読み書き性能を測る各テストで,実マシンを上回る結果となった。これはVTの効果というよりも,仮想マシン特有の現象と言える。仮想マシンのハードディスクは,実際にはファイルである。実マシン側で見れば,一つのファイルを読み書きしているのと同じ。仮想マシンの方が高い値を示したのは,ヘッドの移動距離が短いからだろう。

 なお,今回測定機で使用したマザーボードのBIOS設定画面には,VTだけでなく「LT(開発コード名:LaGrande Tecnology)」の表示があった。LTはセキュリティ保護のために不可視の領域を作る機構。OSの特権命令を検知し,そのアクセス範囲を制限する。基本的な仕組みは,VTとほぼ同じだ。

 測定機のデフォルト設定はVT,LTとも有効。そのせいか,予備テストの段階でVTの有効と無効を切り替えても,ベンチマーク・テストの結果が変わらなかった。VTがうまく動いていないか,VMware Workstationが対応していないのかと思ったが,そうではなかった。LTも無効にして初めて,VTが無効になる。LTの詳細は明らかにされていないが,おそらくVTを利用する命令が,LTと重なっていると見られる。