図1●ハイパワーLEDを使った懐中電灯
左から,単4電池3本使用のパワーLEDを使った懐中電灯,単3電池2本使用のMAGLITE MINI(豆電球),CR2電池1本使用のパワーLEDを使った小型のハンドメード懐中電灯「壱式」,砲弾型LEDを32灯使った懐中電灯。壱式以外は2000~3000円で入手可能。壱式は友人から借り受けたもの。十円玉の大きさと比べると,その小ささが分かる。
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図2●一般的な砲弾型のLED
2本の端子があり,長い方を+側に接続すると電流が流れる。
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図3●LEDには様々な種類がある(1)
図は白色LED。左から(a)Flux LED,(b)レンズ部分が小さい5mmの「帽子型」,(c)レンズ先端部分をカットしてある5mmの「凹型」,(d)3mmの「砲弾型」,(e)5mmの砲弾型,(f)色温度が低い電球色の5mm「砲弾型」。
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図4●LEDには様々な種類がある(2)
側面から見たところ。左から(a)一般的な砲弾型,(b)帽子型,(c)凹型,(d)Flux LED。
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図5●様々な色を発するLED
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図6●紫外線LED
1万円札の印章部分など,紫外線を照射すると反応する塗料に当てると光る。
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図7●自動的に色が変化するイルミネーション用LED
クリックするとムービーをダウンロードできます(18秒,約2Mバイト)

図8●LEDを明るく光らせるには,順方向電圧(VF)以上の電圧を加える必要がある
VFが約3.6Vの青色LEDを3Vのコイン型リチウム電池につないだところ(左)。右は同じLEDに20mA流したところ。3Vのコイン型リチウム電池につないだ場合は電圧が十分でないので,明るく光らない。
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図9●LEDの明るさは流れる電流の大きさで変化する
同じ青色LEDに異なる大きさの電流を流した。左から2mA,5mA,10mA,20mA。
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図10●抵抗
様々な抵抗値のものがある。1本数円から十数円で入手できる。
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図11●定電流ダイオード
決められた電流を流す性質を備える。1本50円くらいで入手できる。
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 最近,身の回りにLED(Light Emitting Diode=発光ダイオード)を使った製品が増えてきたと感じませんか。以前はハードディスクのアクセス・ランプに代表されるようなパイロット・ランプ,つまり目印の役割に使われることが多かったと思いますが,最近はイルミネーションや照明用にも使われてきました。例えば昨年末は,白色と青色LEDを使ったクリスマス・イルミネーションが流行っていました。信号機にもLEDが使われており,これなどはこれまでのフィラメント(白熱電球)のタイプと同等以上の明るさが出ていることでしょう。自動車のストップ・ランプにもLEDを使った車種が増えてきました。

 このようにLEDが広く利用されるようになったのは,高輝度のLEDが開発されたことが大きな要因です。豆電球が普通だった懐中電灯も,今ではLEDを使ったタイプがたくさんあります。少し前は,直径5mmの砲弾タイプをたくさん使った多灯式が多かったのですが,今では1個で1W,3W,5WというパワーLEDを使ったものも出てきました(図1[拡大表示])。自転車のヘッドライトにもLEDを使ったタイプがあります。ダイナモを付けにくいマウンテンバイクを中心に,電池を使った点滅式のLEDライトを付けて走っているのを町でよく見かけます。

 この連載は,このように様々な用途で使われるようになったLEDを使って,いろいろなものを作ってみようというものです。例えば,自転車のヘッドライト,懐中電灯,自動車の室内イルミネーションなどです。東京・秋葉原では,色や種類にもよりますが,高輝度LEDが1本当たり100円~200円で手に入ります。地方の方は,インターネット通販という手もあります。部品1個1個は安いものなので,興味を持ったらぜひ作ってみてください。

 ただ,この連載を担当する記者は,残念ながら電子回路の専門家ではありません。場合によっては,設計のまずい回路を紹介してしまうかもしれません。その場合には,読者の皆さんの中には回路の専門家の方もいらっしゃると思いますので,双方向性のあるインターネットの特長を生かし,ぜひコメントを付けていただければ,ほかの読者の方の役に立つと思います。皆さんと一緒にこの連載を盛り上げていきたいと思いますので,ぜひよろしくお願いいたします。

LED工作に必要な基礎知識

 第1回となる今回は,LED工作に取りかかる前の基本的な予備知識として,LEDの特徴を説明します。LEDの発光原理などに関してはほかにもいろいろと文献がありますのでここでは触れず,LEDを使った工作をするときに必要な最低限の知識だけにとどめておきます。基本はフィラメント(豆電球)を使ったときと同じですが,いくつか注意しなければならない点があります。

 まずLEDには,「ダイオード」という名前が付けられていることからも分かるように,極性があります。ダイオードとは,一般に,片方向にしか電流を通さない素子です。LEDは「アノード」と「カソード」の2本の電極を備えており,アノードからカソードに電流が流れます。逆には流れません。LEDを点灯させるには,アノードを+,カソードを−につながなければなりません。端子の名前は覚えなくても工作はできますが,一般に長い方の端子を+側につなぐことは覚えておいてください(図2[拡大表示])。逆につなぐと光りません。

 LEDの大きさや形状は様々です(図3[拡大表示],図4[拡大表示])。砲弾型なら,レンズ部分の直径が3mmまたは5mmのタイプが一般的ですが,8mmや10mmといった大型のものもあります。先端のレンズ部分を切り落とすなどして照射角を広くしたタイプや,「Flux LED」という4本足のタイプもあります。

 または,LEDには,赤,黄色,緑,青,白など,様々な色の種類があります(図5[拡大表示])。最近は紫外線を照射するLEDもあります(図6[拡大表示])。赤,緑,青の3色の素子と制御用ICを内蔵し,外部に回路を組まずに自動点滅するLEDもあります(図7)。イルミネーションに使うときれいです。

 フィラメントにも色つきのものがありますが,LEDはフィラメントと異なり,その色の光を発光します。別の言い方をすると,種類によって発光する光の波長が決まっているということです。そして,発光する色によって,必要な電圧(順方向電圧=VF)が異なります。実はLED(ダイオード)は,アノードを+につないでも,ある程度の電圧をかけないと電流が流れないのです。

色によって必要な電圧が異なる

 一般にLEDのVFは,赤色は2.0V程度,青色は3.6V程度です(同じ色でも品種によって異なります)。LEDに加える電圧がVFよりも低いと光りません。正確には,LEDが光る電圧(LEDに電流が流れるときの電圧)にはある程度幅があるので,例えば青色LEDなら,3V程度でも光りますが,流れる電流が少ないので暗くなります(図8[拡大表示])。

 白色LEDは,発光素子自体は青色で,黄色の蛍光体と組み合わせ,青と黄色の混色で白色にしているタイプが一般的です(赤,緑,青の3つの素子を内蔵し混色で白としているものもあります)。そのためVFは青色と同じです。

 一方,LEDの明るさは,そこに流れる電流の大きさで決まります(図9[拡大表示])。一般に5mmの砲弾型LEDでは,色にかかわらず,定常的に流せる最大電流は20mAくらいです。

 LEDは,VFを超える電圧をそのままかけると流れる電流が急激に増え,壊れてしまいます。例えば砲弾型のLEDに20mAを超える電流を流すと非常に明るく光りますが,極端に寿命が短くなり,やがて必要な電圧をかけても光らなくなります。さらに電圧を高くして大きな電流を流すと,一瞬で焼損してしまうこともあります。

電流を制御する

 先ほどLEDを光らせるにはVF以上の電圧が必要だといいましたが,LEDの発光は,実は電圧ではなく電流で制御する必要があります。

 例えば,3.6Vで20mA流れる白色LEDがあったとします。このLEDにちょうど3.6Vを加えると20mA流れるので,3.6Vの電源に直接接続すればよさそうに思えます。ところが,LEDに電流を流すと発熱し,発熱するとLEDのVFが下がります。すると,LEDに加える電圧は変化していませんが,流れる電流が大きくなります。流れる電流が大きくなるとさらに発熱し,発熱するとVFが下がり,…という循環になって,ある程度でVFは下げ止まりますが,LEDには過電流が流れてしまい,壊れてしまうわけです。それ以外にも,LEDのVFにはばらつきがあるので,同じ型番のLEDでもVFが微妙に異なる場合があります。中にはVFを3.4~3.6Vのように示しているLEDもあります。

 そこで,LEDを長時間連続して光らせるときは,電流を制御します。電源とLEDの間に「抵抗」を入れるのが最も簡単です(図10[拡大表示])。ただし抵抗を使った場合は,LEDのVFの変動によって流れる電流が多少変化します。これは,明るさが変わってしまうことになります。

 ほかに「定電流ダイオード」を使う方法があります。定電流ダイオードは,あらかじめ決められた電流だけを流す性質を持ったパーツです(図11[拡大表示])。流れる電流の大きさは,品種によって決まっており,10mAタイプや15mAなどがあります。流したい電流が20mAの場合には,10mA品を2本並列に使います。

 例えば,自動車のバッテリ(直流12V)を使って青色LED1個を光らせることを考えてみましょう。そのままつないだのでは一瞬で壊れてしまいます。抵抗を使って電流を制限する方法でもいいのですが,自動車のバッテリの電圧は,エンジン停止時には12V程度なのに対して動作時には14V程度まで変動します。抵抗を使って電流を制限したのでは明るさが変動します。

 定電流ダイオードを使えば,電源電圧が12Vから14Vまで変動しても,流れる電流はほぼ一定にできます。定電流ダイオードも抵抗と同様に,電源とLEDの間に直列につなぐだけなので,簡単に使えます。ただし,1本当たりの価格は,抵抗が数円なのに対して,定電流ダイオードは50円以上します。たくさん必要な場合には,価格の差と電源電圧変動による明るさの変化の許容度などを考えて選ぶとよいでしょう。

 そのほか,トランジスタや3端子レギュレータなどを使った定電流回路を組む方法,LED用の専用ドライバICを使う方法などもあります。

 それでは次回から,早速LEDを光らせていきましょう。