音楽や映像を多数保管し,LAN上のパソコンやメディア・プレーヤにこれらのコンテンツを配信するのがメディア・サーバーである。ストリーミング・サーバーともいう。GUIによって音楽や映像のタイトルを容易に選択できるので,使い勝手が非常によい。LANに流されるコンテンツの再生デバイスをパソコンにするか,テレビにするかでシステムの組み方が異なるが,どちらの場合もメディア・サーバーにするパソコンに,メディア・サーバー用ソフトウエアが必要である。音楽の場合は,パソコンのオーディオ出力を使わずに,外部のオーディオ・ハードウエアを使うと良い音が再生できる。
メディア・サーバーにするためのパソコンにインストールするメディア・サーバー用ソフトウエアのうち,著名なものに,オープンソースの「VLC」がある(図1[拡大表示])。
VLCはストリーミング・サーバーと,再生用のメディア・プレーヤーの両方の機能を持っている。対応OSはWindows,Windows CE,PocketPC,Mac OS X,BeOS,FreeBSD,Solaris,Linux,QNXである。対応しているビデオCODECはMPEG-2,WMV 1/2/3,H.264,MPEG-4,DivX 5,XviD,Real Videoなど非常に多い。対応しているオーディオCODECも多く,MP3,AAC,AC3,DTS,WMA 1/2,Real Audioなどである。
VLCは,ハードディスクあるいはCD-ROM/DVD-ROMドライブに存在するこれらのCODECでエンコードされたメディア・ファイルをローカルで再生するだけでなく,LAN上の機器にストリーミングもできる。ビデオ・キャプチャー・カードや衛星放送チューナー(米国のみ)から取り込んだ映像も直接ストリーミングできる。
VLCのサーバー機能を使ってストリーミングしたメディアを再生するには,VLCのプレーヤ機能を使用できる。VLCによるストリーミングは,単一のIPアドレスを対象としたユニキャストと,複数のIPアドレスを対象としたマルチキャストの両方ができる。
ただし,すべての入力機器,CODEC,ストリーミング方式の組み合わせがサポートされているわけではない。例えば,WMAの音声はローカルで再生できるが,ユニキャストによるストリーミングはまだサポートされていない。また,WMVの高精細版であるWMV HDの映像は,最大解像度1080ピクセルの高精細(HD)ビデオを実現するが,VLCではローカルでの再生はできるものの,ストリーミングして別の機器で再生するとブロック・ノイズが発生してしまう。また,WMV HDのオーディオに利用されているマルチチャネルのWMA 9 Proは,まだストリーミングがサポートされていない。
ストリーミング・サーバーにApacheを使う
VLCでストリーミングするには,サーバーでApacheを動作させる。受信側のPCでは,ブラウザに一覧表示されるメディアのファイル・リストから選択して,再生できる。
VLCを使ったストリーミング・サーバーをWindowsで構築する場合,Apacheの設定ファイル「C:\Program Files\Apache Group\Apache2\conf\httpd.conf」の中にある次の部分を変更すると「ユーザー名」ユーザーの「My Videos」フォルダに存在するファイルを,閲覧側のPCのブラウザに一覧表示できるようになる(図2[拡大表示])。
#< Directory "C:/Program Files/Apache Group/Apache2/htdocs">
↓
< Directory "C:\Documents and Settings\ユーザー名\My Documents\My Videos">
VLCで再生するには,再生したいファイルのリンク(URL)をVLCの「開く」ダイアログにコピーする(図3[拡大表示])。
VLCは日々,更新されており,ほぼ毎日のように新バージョンがアップロードされている。Nightly buildはVLCのWebサイトにある。
VLCには,telnet,Webなどのユーザー・インターフェースがある。最近のビルドには図4[拡大表示]のような新しいWebインターフェースが追加された。
VLCは,VLM(VideoLAN Manager)と呼ぶVoD(Video on Demand)を行うための機能も備えている。その制御はWebブラウザで可能である(図5[拡大表示])。
次回は,ハイビジョン・テレビで視聴する方法を紹介する。