|
必聴講座ご紹介 Cloud Days Tokyo 2012 エムオーテックス Cloud Days Tokyo 2012 ヴイエムウェア Cloud Days Osaka 2012 アマゾン データ サービス ジャパン |
【現場ファイルNo.4】
|
|
|
アストムでは1999年頃まで毎日のように,部材の欠品・欠品による工程間の手待ち・人員の過不足・新機種の手配漏れなどが頻発していた。このため,製品の納入約束期限を守れず,品質上の問題も多発していた。また翌月はおろか当月の売上高さえ把握できなかった。生産管理システムの改善が,焦眉の課題となっていた。
生産管理システムの導入を思い立った当初,YMSLに大手2社を加えた3社を対象に,製品を比較した。この結果,「面倒見が良さそうなこと」(アストムの菅谷幹彦取締役)などを考慮して,YMSLの「PC2/MC」が選ばれた。
「システム導入の問題点には,システム自体の問題,運用上の問題,関連部署の協力度などが考えられる。特に最初の2つについては導入時のノウハウ提供が必要と思い,稼働後の2-3ヵ月間の面倒見を重視した」(菅谷取締役)。もちろん,導入コストがリーズナブルであることも重要な点だった。
![]() 「製品選択では面倒見を重視した」という菅谷幹彦取締役 |
システムの導入に当たり,アストムは基本に忠実に従いながら準備を進めた。ここが極めて重要なポイントである。
システムを運用する上で,まず,日常業務におけるデータ入力などのルールを遵守するよう,従業員教育を徹底した。「管理がきちんとしていなければ,全体が良くならない。これはシステム導入だけでなく,すべてに言えることです」(菅谷取締役)。システムの導入に当たって「データ」や「日常業務」の質の重要性を充分認識している役員がいることは,圧倒的な強みとなる。
アストムがシステム導入の準備で,いかに基本に忠実だったかを示す例を,以下に列記する。
(1)菅谷取締役が生産管理システム導入プロジェクト・チームのトップになり,役員自ら率先して導入進度を常時フォローアップした。「"改革"では,ある部分でトップからの『黙ってやれ!!』的な強いリーダーシップも必要となる」(菅谷取締役)ためだ。
(2)エース級の人材を思い切ってラインから抜いて,プロジェクトへ投入した。
(3)PC2/MC標準の業務プロセスはMRPとしてスタンダードなものだったので,ソフトのカスタマイズを避けた。代わりにソフトに業務プロセスを合わせ,仕事のやり方や組織を変えた。結果として,通常約1年を要するシステム導入が,結果的に3ヵ月という短期間で済んだ。
PC2/MCに合わせた業務プロセスの変更例をいくつか挙げると,次のようになる。
(1)従来は営業部門が顧客発注情報と予想をまとめて工場各部門へ指示し,各部門が勝手に計画展開をしていた。PC2/MCの導入に合わせて「生産管理課」を設置し,受発注管理を一元化した。
(2)従来は顧客の計画変更要求に対して,各部門がそれぞれ対応して,勝手に変更していた。それを,週ごとに開催する「生産確定会議」で関係者が意思統一を図り,MRPの生産計画を週次でまわすことにした。
(3)PC2/MCの導入で取引先に対する発注方法が変わるので,取引先向けの説明会を開き,協力を仰いだ。
菅谷取締役はこともなげに語る。「業務を変えるのは,中小企業より大企業の方がしがらみがあって難しいでしょう。中小企業でうまくいかないのは,知識のある人がリーダーにならず,抵抗勢力に説明ができないからです」。
システム導入のプロジェクト開始は,2001年6月。稼働開始は2001年9月。導入したのは,MRP型の統合生産管理システム・ソフト「PC2/MC(ピーシースケア/エムシー)」(YMSL製)である。アストムでの愛称は「ATOMS(ASTOM Total Manufacturing System)。
PC2/MCは,「製造情報管理」「受注・出荷管理」「基準生産計画」「所要量計画」「製造計画・実績管理」「購買管理」「在庫管理」「原価管理」の8モジュールから構成されている。開発・実行環境のdbMAGIC V8.2を使ったクライアント/サーバー環境で稼働する。
アストムは,まず営業会議で売り上げ年間計画,3ヵ月計画,1ヵ月計画を立案。それに基づいて作成した「基準生産計画」をPC2/MCへ入力する。PC2/MCは入力データに基づいて所要量を計算,「製造計画」「作業順序計画」を作成する。購買担当者はPC2/MCが発行した購買注文書にもとづいて「部材発注」する。この製造計画は週単位でまわされ,顧客からの発注情報変更にも週次で対応できる。
システムの特徴を列記すると,以下のようになる。
(1)品目番号と品目を構成する部品・材料を示す分岐番号を組み合わせることで,複数の工程や外注先への手配や部材支給が可能になる。
(2)定義された製造ポイントへの作業指示や在庫ポイントでの在庫把握,そして実績報告から在庫を自動更新できる。
(3)有償支給制度のもとで,構成品目の単価積み上げによって支払い単価を自動的に計算できる。
このほか,LANの構築とサーバーへの情報一元化を進めることで,経営指標や製造ノウハウをデータベース化。各種会議で,データベースに記録されたデータをオンラインで表示しながら議論できるようになった。
当初目標は在庫縮減・混雑からの脱却だったが,結果的にそれ以外にも大きな効果が得られた。
具体的には,
(1)売上計画が明確になり,製造の能力・負荷のバランスが取れるようになった。
(2)生産に対する部材の入手上の問題が明らかになり,先手を打てるようになった。
(3)部材の欠品が減少し,在庫も2004年8月を100とすると,2005年12月は52にまで減少した。
(4)生産管理に関する業務が全体的に明確になり,業務上の齟齬(そご)がなくなった。
営業部門・顧客と製造部門との間でのオンライン双方向情報交換,作業指導書・品質管理情報などのオンライン表示など,未解決のテーマがいくつかある。「システム運用フェーズでブラッシュアップしていくことで,品質改善や在庫縮減を進め,足腰の強い企業にしたい」(菅谷取締役)。
|
→増岡 直二郎バックナンバー一覧へ |
■増岡 直二郎 (ますおか なおじろう)【略歴】 小樽商科大学卒業後、日立製作所・八木アンテナなどの幹部を歴任。事業企画から製造、情報システム、営業など幅広く経験。現在は、nao IT研究所代表として経営指導・執筆・大学非常勤講師・講演などで活躍中。 【主な著書】 『IT導入は企業を危うくする』、『迫りくる受難時代を勝ち抜くSEの条件』(いずれも洋泉社) 【連絡先】 nao-it@keh.biglobe.ne.jp |