米マイクロソフト コーポレート・バイス・プレジデントのアヌープ・ガプタ氏
米マイクロソフト コーポレート・バイス・プレジデントのアヌープ・ガプタ氏
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 米マイクロソフトは1月末,企業向けのコミュニケーション・ツールを開発する「ユニファイド・コミュニケーション・グループ」を設立した。同グループはメール/グループウエア・サーバー「Exchange」の担当部門と,企業向けのインスタント・メッセンジャー(IM)を担当していたリアルタイム・コラボレーション(RTC)グループを統合したもの。新部門の責任者であるアヌープ・ガプタ・コーポレート・バイス・プレジデントに,マイクロソフトが考える次世代の企業内コミュニケーションについて聞いた。(聞き手は武部 健一=日経コミュニケーション)。

--Exchangeの部門とRTCグループを統合した理由は何か。

 マイクロソフトは「ユニファイド・コミュニケーション」というビジョンを掲げている。このビジョンを実現するためには二つの部門を統合し,社内のリソースを集約する必要があった。
 背景を説明すると,これからは企業にとってチームで協調して行う仕事がより重要になる。さらに,良くも悪くも24時間世界の各地とつながっており,何かあれば顧客やパートナーからすぐに対応を求められる。たとえ,地方に本拠を置く企業でもグローバルなマインドが必要になる。
 このような時代には,携帯電話やPDA(携帯情報端末)といった携帯端末の役割が重要性を増すだろう。そして,世界各地のさまざまなデバイスから多くの情報が入ってくる。これをコミュニケーションやコラボレーション・ツールでどのように扱い,生産性の向上へつなげていくかが,新設したグループの大きなテーマだ。

--ユニファイド・コミュニケーションでは具体的にどのようなシステムの実現を目指すのか。

 まず“人間指向”のプレゼンスだ。現在,私たちはいろいろな連絡先を持っている。自宅の電話番号や職場の電話番号,携帯の電話番号,メール・アドレスなどだ。そして,これらの中からどれを選べばよいのかを判断するのが難しくなっている。
 相手のプレゼンスが分かれば,連絡を取る前に最適な連絡手段が分かる。時間の節約にもなる。プレゼンスは相手のパソコンがオンラインなのかどうかだけではなく,携帯電話で話し中なのかどうか,(グループウエアの)カレンダー機能と連携して相手のスケジュールは今どうなっているのか,どこのビルにいるのか,といった情報も含む。
 プレゼンスは特に各メンバーの生活時間帯が異なるグローバル・チームで仕事をするとき,非常に役に立つ。相手がオフィスにいるのかどうかの情報がすぐに分かるので,コミュニケーションが効率的になる。
 加えて,コミュニケーションはシームレスになるのが望ましい。現在はメールやIM,テレビ会議,電話,ボイス・メールなど,いろいろなコミュニケーション手段が縦割りで分断されている。これを統合化する。例えば,表示されている名前をクリックするだけで,メールや電話,IMなど,さまざまな方法で連絡を取れるようにするのが理想だ。
 可用性も重要となる。パソコンや携帯電話を使ってオフィスでも自宅でも出張先のホテルでも,これらのコミュニケーション手段を利用できるようにする。

--コスト面ではどうか。

 ユニファイド・コミュニケーションはTCO(total cost of ownership)の低減にもつながると考えている。例えば,従来のシステムでは新入社員が入ってきたら,電話とメールの設定作業を別々に行っていた。だが,ユニファイド・コミュニケーションのシステムでは,一度Active Directoryに登録するだけでさまざまな設定が完了する。
 これはコンプライアンス(法令遵守)の面でも効果的だ。これまではメールや電話,IM,ファイル・システムなどで,各システムごとにコンプライアンスを管理する仕組みが必要だったが,これも統合できる。

--日本では企業内にIMが浸透しているとは言い難い。米国ではどうか。

 日本ではIMの利用が相手に対して少し失礼に当たると思われているのだろう。米国では子供とおじいさんがIMでチャットをしている。仕事の世界でも同様に使われている。

--マイクロソフトは法人向けのIM「Office Communicator」以外に,以前から一般消費者向けのIMとして「MSNメッセンジャー」を提供している。仕事でもMSNメッセンジャーを使えばよいのではないか。

 マイクロソフトとしてはビジネスではOffice Communicatorの利用を推奨したい。なぜならActive Directoryと統合でき,Exchangeやカレンダー機能との連携,検索機能などが利用できる。このようなビジネスのニーズに対応する機能をMSNメッセンジャーは持っていない。
 とはいえ,Office Communicatorで社外の人や友人,家族とも連絡を取りたいという人はいるだろう。そのために,Yahoo!やAOL,MSNのメッセンジャーと接続できる機能を提供している。