マイクロソフトは2006年2月3日に,Windows Server 2003の更新版である「Windows Server 2003 R2」を発売した。Windows Server 2003 Service Pack 1に,ストレージやネットワークに関する新機能を追加した製品である。2006年3月以降に販売されるWindows Server 2003はすべて「R2」になる。価格は従来通りで,推定小売価格は「Standard Edition」が13万円(Open Business時),「Enterprise Edition」が44万9000円(同)である。

 Windows Server 2003 R2の追加ソフトは侮れない。例えば「フォルダ単位のクォータ管理機能」は,従来は10万~20万円するサード・パーティ製ソフトがなければ実現できなかった機能である。また,R2に搭載された新しいデータ転送技術「Remote Differential Compression」を使えば,「本社のファイル・サーバーと支店のファイル・サーバーをWAN経由で常に同期する」といったことが可能になる。こういったソリューションを実現するためには,従来はやはり数十万円のサード・パーティ製ソフトが必要だった。

 Windows Server 2003 R2であれば,これまで高価なサード・パーティ製ソフトが必要だった機能を,標準で使えるわけである。既存のWindows Server 2003と比べて,非常にお得な製品であるといえるだろう。R2の新機能の数々を,本連載「Windows Server 2003 R2入門」で紹介する予定である。

 第1回の今回は,マイクロソフトがなぜ「R2」のような更新版をリリースするのか,その背景について解説する。実はマイクロソフトは,2005年末から2006年にかけて,「R2」と名前の付く製品を5種類もリリースする予定である。R2とは何なのか説明しよう。


2006年末までに5種類の「R2」が登場

 「R2」とは「Release 2」または「リリース・アップデート」の略である。マイクロソフトは2003年に,サーバー製品に関して「4年ごとにメジャー・バージョンアップを行い,2年ごとに『R2』を出荷する」というポリシーを公表している。Windows Server 2003 R2,並びに同時に出荷された「Virtual Server 2005 R2」は,このポリシーに基づいてリリースされた最初の製品になる。

 マイクロソフトは2005年から2006年にかけて,下記のような「R2」製品を出荷する。

・Virtual Server 2005 R2 (2005年12月に出荷済み)
・Windows Server 2003 R2(2006年2月に出荷済み)
・Windows Storage Server 2003 R2(2006年第2四半期に出荷予定)
・Windows Small Business Server 2003 R2(2006年第2四半期に出荷予定)
・Systems Management Server 2003 R2(2006年第3四半期に出荷予定)

 「Windows Storage Server 2003 R2」と「Windows Small Business Server 2003 R2」はどちらも「Windows Server 2003 R2」を基にした製品だが,それぞれ独自の専用機能を備えている。

 例えばWindows Storage Server 2003 R2には,「Single-instance Storage」という機能が実装される。これは,サーバー上に同じファイルが重複して存在する場合に,それを見つけ出して,実体は1個だけ保存するようにするという機能である。ストレージの容量節約になる。従来よりも効率的なインデックス・ベースの全文検索機能も搭載される予定だ。こういった機能は,Windows Storage Server 2003 R2の独自機能であり,その基になっているWindows Server 2003 R2や,従来バージョンのWindows Storage Server 2003には実装されていない。

 Windows Small Business Server 2003 R2には,「Windows Server Update Services」の強化版が搭載されるほか,「Premium Edition」に含まれるSQL Serverのバージョンが従来の「2000」から「2005」に変更される。Systems Management Server 2003 R2にも,マイクロソフト製品だけでなく他社製ソフトウエアのアップデートが実行できる機能が追加される。


R2なら互換性問題は起きない

 R2はバージョンアップと異なり,基本的な仕様が変更されることはない。Windows Server 2003 R2は,OS本体はWindows Server 2003 SP1そのものである。追加機能はOSとは別のCD-ROMで提供され,デフォルトではインストールされない。R2の利点は,バージョンアップ時に必要だった既存アプリケーションの互換性テストなどが不要だということである。

 R2であれば,バージョンアップを待たずにサーバー・ソフトの機能強化ができるし,アプリケーションの互換性に悩まなくてもよい。ユーザーにとって良いことずくめの製品のように思われる。それでも,1点だけ注意点がある。それは,Windows Server 2003の既存ユーザーは「ソフトウエア・アシュアランス(SA)」を購入していなければ,Windows Server 2003を入手できないことである。SAを買っていない場合,Windows Server 2003 R2を買い直す必要がある。

 ソフトウエア・アシュアランスとは,契約期間中は追加料金無しでバージョンアップできるほか,電話サポートなどの特典が提供される制度である。ソフトの購入契約時に「ライセンス(L)」と呼ぶ新規購入価格に加えて,SA価格を上乗せする必要がある。

 サーバー製品のSA価格は,ライセンスに対して年間19%(2006年7月以降は25%)である。4年に一度ライセンスを買い直すというユーザーであれば,ちょうど割に合う価格だ。

 もっとも過去には,「SQL Server 2000」のように5年以上バージョンアップしなかった製品も存在した。現在のように,2年おきにメジャー・バージョンアップされるか,またはR2が出荷されるのであれば,ユーザーは確実にSAの権利を行使できる。

 SAは2001年の導入以来なかなか普及が進まないので,マイクロソフトはSAの拡販に力を入れている。2006年3月14日には,SAの特典を拡大して「24時間電話サポート」などを提供する予定である。R2も基本的に,SAの拡販策の1つであると考えられるだろう。