方正
管理部 経営企画担当 チーフ
河島 竜平 方正
管理部 経営企画担当 チーフ
河島 竜平


オフィスのIP電話化はなんとか終了した。今度は、日中間をIP電話で接続し、無料通話を実現しなければならない。IP電話担当のユジュンが本領を発揮して、うまく進めてくれるはず・・・。しかし、計画性がなく、不安はつきない。こうなったら、北京大学の英知に賭けるしかない。

 IT孫悟空である管 祥紅社長の究極の目的「日本-中国無料通話接続」の話を聞いたときに、すべてがうなずけた。IP電話は巷(ちまた)で話題になっていたが、「外国との間を無料通話させる」と提案したベンダーは日立インフォメーションテクノロジー(日立IT)以外にいなかった。

 相手が中国となると、接続するには技術的なハードルを越えることが必要に違いない。だから社長自身がいろいろ調べ、IP電話を導入するときにちゃんと協力してもらえるベンダーを選んだのだと自分なりに納得した。

 しかし自分としては専門外のIP電話である。当然すでに出来上がったものを導入するだけだと思い、業務の片手間に導入作業をやってきたのだ。まさか「やってみなきゃつながるかどうかわからない」とか「理論的には大丈夫なはず」のプロジェクトをやらされていたとは・・・。

不思議なキーマン、ユジュン

 于軍(ユジュン)は不思議な男だった。2004年8月のIP電話導入前ごろ、IP電話担当として入社した。しかし、私がこれほど苦労してきた導入作業に関して興味を示さない。バタバタ走り回っている我々総務部門を横目に、ひたすらパソコンに向かって何かやっている。

 管社長と北京大学で同期だったというから、まあ良い頭脳の持ち主なのだろう。電話の声は大きく、日本語も中国語も同じペースで流暢(りゅうちょう)にしゃべる。IP電話にトラブルが生じると“ごくたま”に技術的にサポートしてくれるが、内容は限定的でちっとも頼りにならない。問題が発生すると、もっぱら日立ITに助けを求めるようになっていた(図1)。

図1 不思議なIP電話担当「ユジュン」
図1 不思議なIP電話担当「ユジュン」

「ねえ、ユさん、本当にIP電話のこと詳しいの?」
「うーん、IP電話というよりは、僕はファイアウォールとか、ネットワーク・セキュリティが専門なんですよ」
けろっとした顔で言う。