パソコンのネットワークの設定を間違えてしまって,うまく接続できなくなったときなどに「管理者に問い合わせてください」といった内容の警告メッセージが表示されることがあります。また,アプリケーション・ソフトをインストールするときに「管理者権限で行ってください」という注意書を見かけることもあります。ここでいう「管理者」とは,いったいだれなのでしょうか。

OSの設定を変更できるユーザーが管理者

 普通にパソコンを使っているときに登場する「管理者」は,おおむね次の二つのどちらかです。一つは「コンピュータ管理者」で,ソフトのインストールや削除,OSの設定変更などを行うときなどに登場します。もう一つは「ネットワーク管理者」。こちらは主にネットワーク関係のトラブルが起こったときに登場します。単に「管理者」と言った場合は,前者のコンピュータ管理者を指しているケースがほとんどです。

 コンピュータ管理者というのは,そのパソコンの基本的な設定を変更する権限(管理者権限)を持つユーザーのことです。管理者は,もともと英語のadministrator(アドミニストレータ)の訳語なので,アドミニストレータ権限とか,アドミン権限と呼ばれることもあります。root(ルート)権限という用語をご存じかもしれません。これも意味は同じで,管理者権限を指します。サーバーなどによく利用されるUNIX(ユニックス)系OSでは,管理者権限を持つユーザーの名前としてroot(樹木の根っ子という意味)が使われることから,こう呼ばれています。

 UNIXやWindowsNT/2000/XPを使ったパソコンでは,ユーザーごとにできることが細かく制限されています。例えば,ネットワークの設定を変更したり,ドライバ・ソフトと呼ばれるOSの根幹にかかわるソフトをインストールする作業が許されるのは,管理者権限を持ったユーザーだけにしてある場合がほとんどです。

 こうしたしくみになっているのは,OS自体のセキュリティを高めるためです。UNIXやWindowsNT/2000 /XPでは,OS上で動作する一つひとつのプログラムにまで,それぞれ権限を与えられて動作します。簡単にOSの設定を変更させないためです。

 もう一方のネットワーク管理者は,パソコンが接続されているネットワークを作った人と理解するとよいでしょう。ネットワークを利用していて起こったトラブルを解決するには,そのネットワークがどうなっているかという情報を知る必要があるからです。

 例えば,ネットワーク全体の構成がどうなっているか,どんな機器が使われているかといった情報です。こうした情報を全部知っているのは,そのネットワークを作った人になります。「管理者に問い合わせてください」は,要するに「知っている人に聞け」という意味なのです。

 社内ネットワークなら情報システム部のような管理部門が,ネットワークの設計情報をまとめて把握しています。では,自宅でADSL回線などを使ってインターネットにアクセスしている場合はどうでしょうか。

ネットワーク管理者はそのネットを作った人

 この場合は,ネットワーク管理者が複数存在します。ADSLモデムから先はプロバイダやADSL事業者が管理者になります。ADSL回線がどのような機器や構成でインターネットまでつながっているかは,ユーザーにはわかりません。

 一方,ADSLモデムより手前側の管理者は,ユーザー本人になります。例えば,ブロードバンド・ルーターを使ってADSL回線を複数のパソコンから使えるようにしているケースなどでは,ルーターの設定を知っているのは管理者であるユーザーだけです。