図 ギガFTTHとほかのブロードバンド・サービスでネットワーク構成と速度を比較
図 ギガFTTHとほかのブロードバンド・サービスでネットワーク構成と速度を比較
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 ギガFTTHとは,各家庭まで光ファイバを引き込んで高速で安定した通信を実現するブロードバンド回線サービス「FTTH」(fiber to the home)の一種。従来100Mビット/秒だった回線速度を1Gビット/秒まで引き上げたサービスだ。ユーザー宅内に,電気信号と光信号を相互変換する伝送装置「ONU」(optical network unit)を置き,1Gビット/秒の光ファイバ回線と家庭内ネットワークをつなぐ。NTT西日本やNTT東日本,ケイ・オプティコム,KDDI,ソフトバンクBBなどがサービスを提供している。

 では,ギガFTTHをほかのブロードバンド回線サービスとの比較で見ていこう(図)。

 ADSLは,メタルの電話線を使って高速伝送を実現している。速度は,収容局(電話局)とユーザー宅の間で,下り最大50M,上り最大12Mビット/秒だ。ADSLの伝送速度は距離や外部の環境に依存するので,収容局から1kmも離れると下り速度は半分の25Mビット/秒程度に落ちる。

 100メガFTTHは,収容局からユーザー宅までを100Mビット/秒の光ファイバ回線でつなぐ。これは上り下りとも100Mビット/秒の固定で,周囲の環境に左右されない。ただし,一般的な一戸建て住宅向けサービスでは100Mビット/秒の帯域を複数のユーザーで共用し,マンション向けでは1棟で1本のファイバを共用する格好になる。このため,スループットは100Mビット/秒を下回る。

 ギガFTTHの構成は100メガFTTHと変わらない。100メガFTTHとの違いは,収容局とユーザー宅を結ぶ光ファイバ回線の伝送速度が1Gビット/秒になった点だ。

 一戸建て住宅向けのギガFTTHサービスの基本となる技術は「GE-PON」(gigabit Ethernet - passive optical network)と呼ばれる標準技術である。収容局から出る1本の光ファイバを最大32ユーザーで共用する。各事業者は,GE-PONの技術をベースにして,自社のサービスに合わせて独自のネットワーク・インフラを構築している。マンション向けでは,1棟に1本のファイバを引き込み,建物内では下りの伝送速度が最大100Mビット/秒のVDSL(very high-speed digital subscriber line)技術を使うケースが多い。

 ギガFTTHサービスを提供する多くの通信事業者は,ONUのインタフェースに100Mビット/秒のイーサネットを使う。それでも,100メガFTTHに比べて,1ユーザーが利用できるスループットは大幅に向上する。さらに,ケイ・オプティコムのように,ONUのインタフェースに1Gビット/秒のイーサネット規格「1000BASE-T」を使うサービスを提供する事業者もある。

 ギガFTTHのメリットは,インターネット・アクセスの速度が向上することだけではない。高画質の映像配信や,加入電話の電話番号をそのまま使えるIP電話を光ファイバ回線経由で利用できるようになるからだ。つまり,(1)高速インターネット,(2)高画質の映像配信,(3)固定電話と同等の機能を持つIP電話の3点セット——いわゆる「トリプル・プレイ」——を,すべてのユーザーにもれなく安定的に提供できるのである。