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日経コミュニケーション

続・IP電話の夜明け前(18)

社長ワークアウトがある!(2002年末〜2003年)

沖電気工業
情報通信事業グループ
インキュベーション本部
eおとプロジェクト
薄葉 伸司 沖電気工業
情報通信事業グループ
インキュベーション本部
eおとプロジェクト
薄葉 伸司


広帯域の音声を商品化する決意をしたものの、なかなか商品に結び付かなかった。社内でのスポンサー探しも失敗に終わっていた。

 2002年11月も終わりに近づいた頃。私たちは通常業務に忙殺されており、「広帯域VoIP」への道には次第に閉塞感が強まっていた。

 そんなある日、チャンスは突然やってきた。2,3日後に青柳が所属するIPシステム企画開発本部で、「社長ワークアウト」が行われるというニュースが飛び込んできたのだ。「社長ワークアウト」とは、社長が現場の社員とフェース・ツー・フェースで意見を交換する場として設けられている沖電気のしくみである。組織の壁を越え、事前レビューもなく、現場の社員が考えを伝える場として設定されていた。この取り組みは篠塚社長が「会社を良くするためには今何をやるべきかなどの問題意識を共有したい」との思いから2001年2月に始めたもので、現在でも続いている。

 このチャンスを生かそう。青柳と私の思いは一致した。例の試作機を、「社長ワークアウト」に向かう青柳に託した。

既存事業とのギャップ

 「社長ワークアウト」から戻ってきた青柳の顔は輝いていた。社長からの反応は、予想以上のものだったという。私達の「音のこだわり」を理解するコメントをもらい、これで自信が沸いた。大局的に見て正しい方向に進んでいるに違いない、進むべき方向は間違っていないのだという自信である。これを契機に私達は、希望を持って進む決意をした。また、社内の理解者も増え、基礎的な技術開発については、承認が得られた。これで少し前進しそうな気がした。

 しかし私たちは、具体的な製品の形や製品化タイミングについては悩みをかかえていた。フルIPのネットワークでは、従来の電話網の「3.4kHz帯域」の制約から解放されるので、広帯域音声が使われるようになるであろうと確信はあったものの、現実は広帯域音声の電話機がまだ一台も存在していなことからスタートしなければならないのである。

 つまり、極論をいうと最初の一人が高品質端末を入手したとしても、この世に存在するその他の端末はすべて通常品質の電話であるので、その第一ユーザは高品質な電話の価値を享受できないということになる。「音の良い電話」というコンセプトで商品化するには、一気に普及させるけん引力となる「モチベーション」が必要であった。

 私たちの思いの一方で、「電話の音が良くなったからといって、どれほどの価値があるのか?」という声も根強かった。電話をよく知っている人ほど、ISDNの高品位電話が普及しなかったことや、音質の良さをうたった携帯電話プロモーションの失敗例を引き合いに出し、否定的な反応を示した。否定され、自分自身の心にも懐疑心が頭をもたげてきた。その度に、青柳と試作電話の音を聴き直した。それを聴くと、「絶対になにか価値がある」との思いをあらためて強くなった。その価値観を論理的に説明できないのが口惜しかった。

 また、仮にそのインスピレーションが正しかったとしても、事業として進めるにはまだあまりにも距離があった。「広帯域VoIP」を事業として考えた場合、既存事業と矛盾する点も少なからずあり、私たちはそのギャップに悩んだ。いい打開策が思いつかず、ついには途方に暮れてしまった。そんなときだった。社内イントラネットで「沖ベンチャーファンド飛翔」という記事が目に飛び込んできた。

「インキュベーション支援プログラム」への参加

 イントラネットによると、「沖ベンチャーファンド飛翔」というのは、商品・技術や市場などの強みを利用した新規事業に対する投資を行う、2002年度に創設された社内ファンドで、「インキュベーション支援プログラム」が伴う。これは、新しい事業を起こそうというアイデアと意思を持っている社員にチャンスを与え、事業化の目処がつくと投資を得られるというものだという。

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 [2006/02/17]

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