PLCは電力線を間借りする通信技術
PLCは電力線を間借りする通信技術
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 高速電力線通信(PLC:power line communication)は,既設の電気配線を使う通信技術である。2M~30MHzの周波数の電気信号を使い,最高数十M~200Mビット/秒程度の通信を実現する(図)。

 2006年6月,総務省の情報通信審議会が答申を出したことで,実用化へ向け大きく動いた。早ければ2006年秋にも,PLCによる通信機能を備えたモデムや家電製品が登場しそうだ。

 PLCは,すでに2000年頃から国内でも検討されており,10k~450kHzの帯域を使う低速のものは実用化されている。しかし,2M~30MHzという高い周波数帯域を使うPLCは,伝送路となる電力線から大きなノイズが発生する。そのため既存の無線通信や放送,レーダーなどの利用に影響を与えるという問題があり,許可されていなかった。

 電力配線は,1対の太い銅線を平行に張り巡らせるという単純な構造になっており,高速通信のための高周波信号のやりとりは考慮されていない。イーサネット用のケーブルのようなノイズを抑えるより対線構造になっていないため,外部に対してより大きなノイズを出す。

 このため,PLCからのノイズをどこまで許容するのかを決める必要があった。総務省では,「PLCのノイズが,電力線から10~30メートル離れたところで周囲雑音と同等になること」という条件を付け,この条件を満たすために,ノイズの元になる2本の導線を同方向に流れるコモン・モード電流を,2M~15MHzの帯域で30dBμA以下,15M~30MHzの帯域で20dBμA以下に抑えるという許容値を決めた。

 PLC機器を開発するメーカーの多くは,送信電力に制限がある無線通信で広く使われているOFDM(orthogonal frequency division multiplexing)を利用する。OFDMはたくさんの周波数(サブキャリア)を用意し,それぞれにデータを割り当てて送る変調方式。特定の間隔であれば,サブキャリアの周波数帯が重なっても干渉しないという特徴を使って,効率よくデータを転送する。

 各メーカーは,単純にOFDMを使うだけでなく,それぞれに工夫を加えている。例えば,松下電器産業とパナソニックコミュニケーションズは,サブキャリアの周波数特性を改良したウェーブレットOFDMを開発。ノイズが懸念される特定の周波数だけ使用しないようにしたり,一つのサブキャリアで送るデータ量を増やしたりしている。ただ,各社が工夫を加えているため,異なるメーカーの製品間では共存ができないことも起こりえる。当面は同一メーカーの製品をそろえて利用することになる。 (2006年7月26日改訂)

 

高速電力線通信の実用化に際して問題になった,他の無線通信を妨害する漏えい電波の原因になるのはどれでしょうか。