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【中級】電子メール・システム いま見直しのとき(後半) 運用を見据えてシステム構築

分散したスプールを統合,アカウント管理を整備する

2006/02/23
日川 佳三
出典:日経システム構築 2003年11月号  144ページより
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
図7●ユーザー・アカウント管理は3つのパターン<BR>メール・ユーザーのIDやパスワードを管理する方法には,大きく3種類ある。(1)OSのユーザー・アカウントをメール・システムが利用すると管理コストが大きくなる。(2)ユーザー情報をメール・システム専用のDBで管理すると管理がラクになる。(3)LDAPを使えば,ユーザー情報を他システムからも利用できる
図7●ユーザー・アカウント管理は3つのパターン
メール・ユーザーのIDやパスワードを管理する方法には,大きく3種類ある。(1)OSのユーザー・アカウントをメール・システムが利用すると管理コストが大きくなる。(2)ユーザー情報をメール・システム専用のDBで管理すると管理がラクになる。(3)LDAPを使えば,ユーザー情報を他システムからも利用できる
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図8●企業によるメール・アドレス付けルールの例<BR>企業はメール・アドレスの付け方で悩んでいる。同姓同名問題への対策は企業によってまちまちだ。数字やローマ字,サブドメインなどを氏名に付加することで対処している
図8●企業によるメール・アドレス付けルールの例
企業はメール・アドレスの付け方で悩んでいる。同姓同名問題への対策は企業によってまちまちだ。数字やローマ字,サブドメインなどを氏名に付加することで対処している
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写真1●トレンドマイクロのSPAM対策機能<BR>トレンドマイクロのクライアント向けウイルス対策ソフトは,SPAMメール対策機能を持つ。(a)ウイルス対策と同様,SPAM対策用のパターン・ファイルを更新して利用する。(b)SPAMと判別したメールのタイトルに印を付けるといった運用も可能である
写真1●トレンドマイクロのSPAM対策機能
トレンドマイクロのクライアント向けウイルス対策ソフトは,SPAMメール対策機能を持つ。(a)ウイルス対策と同様,SPAM対策用のパターン・ファイルを更新して利用する。(b)SPAMと判別したメールのタイトルに印を付けるといった運用も可能である
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図9●情報漏えい対策のコンテンツ・フィルタリングとアーカイブ保存が今後の課題<BR>ウイルス対策に手を打った企業が今後取り組むべき運用は,送信メールを媒体とした情報漏えいへの対策である。コンテンツ・フィルタリングは,送信メールをインターネットへ出してよいかどうかを機械的に判別して中継を制御する。アーカイブは,社員がインターネットへ送信したメールを,そっくりそのまま保存する
図9●情報漏えい対策のコンテンツ・フィルタリングとアーカイブ保存が今後の課題
ウイルス対策に手を打った企業が今後取り組むべき運用は,送信メールを媒体とした情報漏えいへの対策である。コンテンツ・フィルタリングは,送信メールをインターネットへ出してよいかどうかを機械的に判別して中継を制御する。アーカイブは,社員がインターネットへ送信したメールを,そっくりそのまま保存する
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 日々の運用コストを削減するためには,メール・システムを維持・運用していく仕組みと体制を整備しなければならない。

 稼働を始めたメール・システムの主な維持コストは,ユーザー管理コストである。具体的には,ユーザーのアカウント情報をどう管理するか,ユーザーのメール・アドレスをどう割り振るか,ユーザー個別のメール設定をどう実施するか,などの運用項目を人手で実施していると,人件費がかさむ。これらの運用ルールを決めたうえで,システムに実装する必要がある。

LDAPを使うユーザーが増加

 認証IDとパスワードなどのアカウント情報を必要とするのは,スプール・サーバー上で動作するPOP3サーバーやIMAP4サーバーである。設定によっては,メール・サーバー自身が,送信メールを中継する際にユーザー認証を施す場合もある。

 アカウント情報を管理する手段は,大きく3つある(図7[拡大表示])。従来の方法は,(1)OSのユーザー・アカウントをメール・システムが利用する方法である。OSのユーザー情報を管理する必要があるため,管理コストが大きくなる。

 これに対し,メール・ソフトだけをOSのユーザーとして登録し,(2)個々のユーザー情報をメール・システム専用のDBで管理する方法がある*6。(1)の方法に比べれば,管理が容易になる。

 さらに,他のシステムからも汎用的に使えるアカウント管理手段が,(3)LDAPなどの外部データベースの利用である。アカウント情報の管理をメール・システムから独立させることが可能だ。新日鉄ソリューションズやアイアイジェイテクノロジーなどのSIベンダー各社は「LDAPを使うのが一般的だ」と口を揃える。

 例えば日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の社内ネットワーク・システムは,人事情報データベースを更新するとActive Directory*7へ自動的にアカウント情報が反映される仕組みを採っている。メール・システムのExchange Serverは,Active DirectoryのLDAPディレクトリ情報を用いてユーザー認証を実施する。NECソフトに至っては,メールに限らず,社内の情報系システム全般からLDAPを参照している。

アドレスは機械的に割り振る

 アカウント情報の管理システムを整備することは重要だが,メール・システムの運用で最も重要なのは,そもそもアカウントを発行する仕組みを整えることである。

 「メール・アドレスの付け方には相当悩んだ。文献を調査して現状のルールに決めた」(大成建設 社長室情報企画部の松原利幸課長代理)と,企業の悩みは大きい。「メール・アドレスを決める際に人手が入ると,好みのメール・アドレスにしてほしいという要望が来る。対応し切れない」(NECソフト ITガバナンスグループの斉藤幸儀ITエキスパート)という声もある。

 メール・アドレスの付け方は,企業によって様々だ(図8[拡大表示])。いずれの企業も氏名のローマ字表記をベースにしている点では共通している。企業によって差異が出るのは,同姓同名が存在した場合の対処方法である。日本HPの方法は,ユーザー名の末尾に数字やローマ字を付加するもので,一般的と言える。

 NECソフトは,サブドメインを利用して同姓同名問題を回避している。サブドメインの利用により,名字だけの短いユーザー名を実現している。

 寺岡精工は,同姓同名の人がすでにいた場合の2人目以降に社員番号を付加する。大成建設では,独自のルールを用い,メール・アドレスの分かりにくさよりもユーザー名を短くできることを優先している*8

 もちろん,こうした問題は企業の規模にもよる。社員数が約350人のジャノメクレディアの場合,「1年を通じて新規に入社する人は数十人程度。メール・アドレスを新規に割り振る際には個別対応できる」(情報本部データセンター情報計画課の松山政司課長)。

ユーザーに設定を任せる

 アカウント管理データベースを用意しただけでは,まだ足りない。ユーザーごとのメール転送設定やパスワード変更などの作業をユーザー自ら実施できる仕組みを用意する必要がある。

 Sendmail Switchなどのメール・ソフト製品や米MiraPointのメール・サーバー・アプライアンス製品は,Webブラウザ経由でユーザーの管理ができる。例えば,パスワードの変更やメールの転送設定,受け取りたくないメールをフィルタする設定などだ。

 オープンソースのメール・ソフトを使う場合は,管理ツールを自作する必要がある。OSのユーザー・アカウントを流用してアカウントを管理している場合は,Web連携アプリケーションの作成にも工夫が必要になる*9


 メール・システムのコア部分は“枯れた”技術だが,ここへ来て,ウイルス対策に続く新機軸がメール・システムに実装されようとしている。1つはSPAM対策機能,もう1つは情報漏えいを防止するコンテンツ・フィルタリング機能とアーカイブ機能である。

 SPAM対策機能は,受信するメールが迷惑なSPAMメールかどうかを判別する機能。形態素解析の後に日本語の文法を考慮し,文字列が登場する頻度や文字列と文字列の距離などを「SPAMらしさ」の判別材料とする。

 ウイルス対策大手のトレンドマイクロは,2004年にSPAM対策機能を持つメール・サーバーを市場に投入する予定だ。同社製のクライアントPC向けウイルス対策ソフトにはすでに,SPAM対策機能を実装済み(写真1[拡大表示])。

 SPAM対策ではないが,ホライズン・デジタル・エンタープライズは,戻ってきたエラー・メールを処理するソフトを提供している。エンベローブFROMと呼ぶ部分を書き換えてメールを送信し,専用サーバーがエラー・メールを一括して受信し,エラーの種類を判別する。

情報漏えいを防止する時代に

 ウイルス対策後の今後のトレンドは,送信メールを監視することによる情報漏えいの防止である(図9[拡大表示])。

 コンテンツ・フィルタリングの主な適用場面は,社外秘の資料をメール送信者が誤って外へ転送してしまう事故を防ぐこと。例えば,「社外秘」と1行目に書かれたWord文書は中継しないというルールを設定しておけば,このWord文書を添付したメールが社外に出るのを機械的にブロックできる。

 アーカイブの用途は,ビジネス履歴の保存義務という社会的な要請に応えること。送信メールを一定期間保存しておき,万一の際に検索・閲覧できるようにしておく。この前提として,暗号化メールは許可してはならない。「暗号化したらアーカイブの意味がない。顧客企業によっては,暗号化したメールはすべて中継を許可しないようにフィルタをかけている」(センドメールの小島国照社長)。

 IIJは,ウイルス対策に加えてコンテンツ・フィルタとアーカイブの機能を備えるASPサービスを提供中だ。ユーザー企業の送信メールのフィルタリングとアーカイブを担当する。リコーが同サービスを利用している。

 リコーがアーカイブするメールの量は多い*10。「自前でメール・システムのすべてを運用していた頃と比べれば,IIJにアウトソースしたことで運用コストは増えた。しかし,以前は取り組んでいなかったアーカイブを実現できることがアウトソースの決め手だった」(リコー IT/S本部IT/S技術センター技術2グループの太田篤宏氏)。

 社内の情報システム部門と業務部門との間でSLA(サービス・レベル・アグリーメント)を取り交わす企業も多い。日本HPの場合,他社からのアウトソーシングを受託するプロフィット・センター「マネージドサービス統括本部」が,自社のメール・システムも管理する。

 他社向けの事業であろうが自社向けの管理業務であろうが,メールの管理という仕事の内容は共通。「社内ユーザーからのアウトソーシングを受託していると位置付けて,SLAを交わしている」(インフラストラクチャーサービス本部ITオペレーション&アカウントマネージメント部の加藤武彦部長)。

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