固定電話と携帯電話を融合する「FMC(fixed mobile convergence)」の動きが,2006年に入ってますます加速している。日本でも今週早々に大きな進展があった。総務省研究会がFMCの電話番号に「060」を新規に割り当てる方針を固めた(関連記事1)。奇しくも2月の6日のことだった。

 この060番号,馴染みのある方はまずいないと思われる。それもそのはず,ごく一部(060-33,060-34,060-35)がNTTコミュニケーションズのユニファイド・メッセージ・サービス「eコール」に割り当てられているにすぎない。事実上の新規番号帯と言える。これはIP電話用番号に「050」が割り当てられた2002年11月25日以来のことであり,実に3年ぶりの新規割り当てとなる。

 060番号がFMCサービスの電話番号として「当確」した理由や経緯などについては日経コミュニケーションの2月15日号にリポートしたので,ここでは海外のFMCサービスの番号体系を踏まえた上で,それらとは異なる道を選んだ日本のFMC番号の将来像を考えてみたい。

 海外のFMCサービスとして最も有名なBTの「BT Fusion」は携帯電話の番号体系を割り当てている。同社のライアン・ジャービス氏は「個人が持ち歩くBT Fusion端末は携帯電話の番号体系がよりふさわしい」と判断の理由を説明している。ただし,携帯電話の番号体系を導入したことで,BT Fusionのコスト・メリットがスポイルされている面がある。BT Fusion端末は,家庭ではBluetooth経由のコードレス電話として使えるため,固定電話並みの安価なレートで発信できる。BT Fusionから電話をかける人には料金メリットがある。だがBT Fusion端末に電話をかける場合,たとえ端末が家の中にあっても,携帯電話と同じ番号体系であることから,携帯電話と同じ料金になってしまう。つまりBT Fusion端末に電話をかける人にとっては何ら料金的なメリットがないのだ。

 ドイツの携帯電話事業者であるO2のFMCサービス「Genion」は,この点を固定電話番号を利用可能とすることで解消している。Genion端末へ電話をかける人も固定電話並みの低料金でかけられる。FMCの海外状況に詳しい情報通信総合研究所の宮下洋子氏によれば,Genionはドイツでは広く一般に知られたサービスとして成功していると言う。

 総務省は,こうした先例を研究会で吟味した上で,携帯電話番号でもなく,固定電話番号でもない060番号を選択した(ただし携帯電話番号のFMC利用は継続審議中)。新しい番号体系は,050番号がそうだったように,認知されるまで時間がかかる。いまでこそ「SkypeIn」でも利用も始まり(関連記事2),安価でどこでも使える電話番号として認知されつつあるが,当初は「信頼の置けない電話番号」というレッテルをはがすことができなかった。

 はたして060番号のFMCサービスは低料金以外にどんなメリットを打ち出せるのか。どこでも使える「090/080」,安価な「0AB~J」,そしてその両面を兼ね備えつつある「050」のイメージを越えることはできるのか。たやすいことではないが,もしそうなれば,世界でも先駆的なFMCサービスとなることは間違いない。