ネットワーク関連の書籍や雑誌を読んでいると,ホスト,端末,ノード,クライアントといった用語が出てきます。いずれも「一般ユーザーが操作するパソコン」という意味で使われていることが多く,それぞれを区別していることは,あまりないようです。しかし,本来の意味はそれぞれの用語で少しずつ違い,指しているネットワーク機器も微妙に異なります。

ネットワークの端にあるから「端末」

 端末という用語は,読んで字のごとく「端にある」という意味で,一般にネットワークでユーザーが操作するパソコンそのものを指します。厳密に定義すると,端末と言った場合には,LANスイッチやルーターといった中継装置は含みません。

 初期のコンピュータ・ネットワークは,1台の大型コンピュータを多人数で使う集中型のシステムでした。そして,この大型コンピュータを利用するための装置を端末と呼んでいました。ユーザーはネットワークの一番端に位置する端末から,中央の大型コンピュータへアクセスしていたのです。ユーザーが操作するパソコンが,ネットワークの端にあるのは今も同じです。このため,今でもパソコンを端末と呼んでいるのです。

 ホストという用語はどうでしょう。そもそもホスト(host)という英単語には,「サービスを提供する者」などという意味があります。このため,ホスト・コンピュータと言うと,端末から利用される大型のコンピュータのことを指します。

 ところが,インターネットの世界になると意味が変わります。インターネットでは,ネットワークを構成するすべてのパソコンをホストと呼びます。理由は,インターネットが開発された当時は,ネットワークにつながるコンピュータと言えば,ミニコンなどの大型のコンピュータしか存在しなかったからです。この呼び方は今でも続いており,IPアドレスを持つすべてのコンピュータがホストと呼ばれています。

 今では,大型コンピュータを多人数で使うことは少なくなりました。それよりも,ネットワーク上に複数のパソコンを置いて,さまざまな処理を分散させる形態が主流になっています。

 そこで出てきたのが,クライアントとサーバーという用語です。処理を要求するコンピュータがクライアントで,要求を処理して返答するコンピュータがサーバーです。そもそもクライアント(client)という英単語には,「依頼人」という意味があります。

 クライアントとサーバーを組み合わせたネットワークのモデルを採用しているのが,今のインターネットです。ユーザーが操作するパソコンがクライアントとなり,Webサーバー,DNSサーバーといった複数のサーバーに処理要求を出します。

ネットワーク機器も含む「ノード」

 最後が,ノードという用語です。ネットワークの物理構成図を描くと,点(装置)とそれを結ぶ線(伝送路)で表すことができます。このようなネットワーク構成図を描いたとき,点を「ノード」,線を「リンク」と呼びます。このため,ノードというと,一般的にネットワーク上にあるすべての装置のことを指します。

 ただし実際には,この用語が使われる場面で,指す装置が異なります。例えば,WANサービスを提供する通信事業者の間では,ネットワークの中継点に設置した交換機をノードと呼んでいます。また,TCP/IPノードと言うと,IPアドレスを持つ装置を指します。

 これらの用語すべてに共通しているのは,一般ユーザーが操作する装置が含まれていることです。このため,ユーザーが操作するパソコンのことを指して,これらの用語が使われているのです。