CDやDVDプレイヤ,ディジタル・カメラ,ディジタル・ビデオ・カメラなど,家電量販店に行くと,ディジタル方式を採用した機器がずらりと並んでいます。ディジタル化の波は,通信分野にも押し寄せています。アナログ方式の携帯電話は2000年初めに姿を消し,今ではディジタル方式が当たり前になっています。2003年末には,テレビ放送(地上波)もディジタル化され,2011年には今のアナログTV放送はなくなります。

 テレビ・コマーシャルなどでは,「ディジタルだから高画質」,「ディジタルだから高速」などといったうたい文句がよく聞かれます。たしかに,アナログよりディジタルの方が性能が良いイメージがあります。でも,それは本当なのでしょうか。そもそも,ディジタル化の良さはどこにあるのでしょうか。

アナログ情報の余分な部分を捨てる

 私たちが目や耳で感じる情報は,すべてアナログ情報です。このようなアナログ情報をコンピュータが扱える1と0の集まりの情報に変えることをディジタル化と言います。

 アナログ信号は,値が連続的に変化する信号です。一方のディジタル信号は,連続していない飛び飛びの値をとります。例えば,アナログのレコードは,音の振動の変化をレコード盤の表面にそのまま記録したものです。一方,ディジタルであるCDは,音の振動の変化を1秒間に4万4100回の間隔に分けて,その時々の振動を1と0のデータに変換して記録します。つまりディジタル情報は,アナログ情報のところどころを記録したものなのです。

 ところが,情報量を減らしたCDでも,レコードの音とそん色ありません。それは,ディジタル化するときに,アナログ情報の余分な部分だけを捨てているからです。人間が耳で聞くことのできる周波数は,一般的に20kHzまでと言われています。CDの場合は,この20kHz以上の信号をカットしています。

ディジタルはノイズに強い

 では,ディジタル化すると,音や画質が良くなると言われるているのはなぜでしょうか。

 アナログ情報もディジタル情報も,送信側から信号を送り出すと,伝送中に信号が変化していきます。伝送中にノイズが入り込んだり,信号自体が減衰するからです。アナログ信号を伝送する場合,一度入り込んだノイズの影響を完全に取り除くことはできません。このため,受信したアナログ信号は,ノイズが乗って劣化したものになります。

 一方のディジタル信号は,入り込んだノイズを比較的簡単に取り除くことができます。例えば,信号を電流で送る場合,電圧の0V(電圧なし)を0に,5V(電圧あり)を1に割り当てれば,1と0を表現できます。この場合,信号は0Vと5Vだけを取ることになりますが,信号にノイズが入ると,1の値を表現したはずの5Vの電圧が5.1Vや4.9Vなどに変化してしまうかもしれません。しかし受信側では,電圧があるかないかをだけを判断すればよいので,ノイズが乗って信号の値が多少変わっても1と0を判断できるのです。このノイズに対する強さが,ディジタルが高品質と言われている理由です。

 また,データを高速に送るためには,短い間隔に多くのデータを詰め込む必要があります。こうなると,送り出した信号の値を,受信側でより厳密に判別する必要が出てきます。高速伝送では,信号の値の小さなずれが命取りになるのです。つまり,データを速く送ろうとすればするほど,伝送中のノイズや減衰の影響を抑える必要が出てきます。このことから,ノイズの影響に強いディジタルの方が,高速伝送に向いてることがわかります。