LANはローカル・エリア・ネットワーク,WANはワイド・エリア・ネットワークの略です。“local”という英単語を辞書で調べると,「特定地域の」あるいは「局所的な」という意味とあります。しかし,最近では広域LANサービスというものもあります。東京本社と大阪支社の間などをつなぐために利用されています。たしかに,世界規模からすれば,東京-大阪間は局所的かもしれませんが,ちょっと不思議な感じがします。
「LANとは何か」という問いに対しても,答えは人によって違うでしょう。ある人は,イーサネットというしくみを使ったネットワークをLANだと答えるかもしれません。社内の管理者が責任を持って管理する範囲をLAN,NTTなどの通信事業者から回線を借りているとWANだと説明する人もいます。
ブロードバンド・ルーターの例のように,パソコンからルーターまでのネットワークをLANといい,ルーターから先をWANという場合もあります。本当のところは,どうなのでしょうか。
自然発生的に生まれた用語
TCP/IPやイーサネットなど,ネットワーク用語の多くは厳密な定義があったり,明文化された仕様書があったりすることが多いのですが,LANやWANにはそれがありません。もともと,LANやWANは自然発生的に生まれた用語なのです。少しネットワークの歴史を振り返ってみましょう。もともと「ネットワーク」とは,飛行機や列車の予約システムなどのように,中央にあるホスト・コンピュータを全国に散らばった端末から利用する,オンライン・システムを指す用語でした。
しかし,コンピュータの性能が上がるにつれ,大学などの計算機センターの中だけでコンピュータ同士をつないで科学技術計算をさせるような使い方が始まりました。このような使い方を始めた人々は,計算機センターのような比較的狭い範囲でコンピュータ同士をつなぐネットワークのことを「LAN」と呼ぶようになりました。つまり,それまでの全国に分散しているネットワークに対して,局所的なネットワークがLANだったのです。
やがて,LANが世界中に普及すると,今度はそれまでのネットワークをLANに対する用語として「WAN」と呼ぶようになりました。したがって,WANはLANの反対語と考えることができます。
ただし,WANのとらえ方は,LANのとらえ方次第で変わって来ます。
イーサネット以外にもLANはある
LANという用語が出始めた当初は,イーサネット以外にもトークンリングやトークンバスと呼ばれるしくみも使われていましたが,今ではイーサネットが事実上の標準となっています。だからLANというと,イーサネットのことを指している場合もあります。ちなみに,日経NETWORKではLANの範囲を「ブロードキャストが届く範囲」と定義しています。ブロードキャストとは,パソコンがすべての端末に向けて送信するデータ・フレームのことです。このデータ・フレームはハブやLANスイッチを通過しますが,ルーターでしゃ断されてしまいます。したがって,ルーターで区切られた範囲がLANということになります。
ただ,一つの会社で複数のルーターを使ってネットワークを区分けしている場合,社内のネットワークをWANだと呼ぶのは,かなり無理があります。そこで「社内ネット」などという用語を使うのが一般的です。これは,LANでもWANでもない領域かもしれません。