写真 米コリジェント・システムズのレオン・ブルックマンCTO(最高技術責任者)
写真 米コリジェント・システムズのレオン・ブルックマンCTO(最高技術責任者)
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 フルIP網の「NGN」(next generation network)を見越した伝送装置の導入が盛んだ。雑多なアクセス回線と基幹ネットワークを結ぶメトロ・ネットワークでは,既設の光回線でIPトラフィックを効率よく処理できる機器が求められている。その解の一つがリング型網の経路制御技術「RPR」(resilient packet ring)を採用した光伝送装置。同機器を主力製品とする米コリジェント・システムズのCTO(最高技術責任者)であるレオン・ブルックマン氏に,RPR対応機器の強みを聞いた。(聞き手は高橋 秀和=日経コミュニケーション

−−RPRが対象とする領域はどこか。

 アクセス回線と基幹ネットワークを仲介するメトロ・ネットワークだ。この領域では,アクセス回線のイーサネットを効率よく収容する伝送装置が求められている。RPRを使えば,現在主流のSONET/SDHを物理層に使いながら,リング型のイーサネット網を構築できる。

 問題は回線障害時の保護機能だ。SONET/SDHでは,バックアップ回線への切り替え時間を50ミリ秒以下と規定している。しかしイーサネットの冗長化を実現するスパニング・ツリー・プロトコル(STP)では,その規定を満たせない。そこでRPRでは,リング網を構成するノードで障害が発生した場合に,該当するノードをう回する保護機能を持たせた。送る方向を変えるのがステア(Steer),折り返すのがラップ(Wrap)だ。

−−RPRの標準化に寄与したと聞いている。コリジェントの実装が反映されているのか。

 そうだ。主に経路の最適化について策定した。ステアは方向を切り替える際にパケット・ロスを起こすが最短経路を通せる。一方ラップはパケット・ロスが起こらない代わりに折り返しの距離が無駄になる。仕様上,両者は同時に利用できない。そこでラップを標準とし,指定したパケットだけをステアで保護する機能を開発した。

−−RPR自体は標準仕様で,対応機器はほかにもある。他社製品と比べたときの強みは何か。

 我々は一から製品を設計した。その自由度がもたらすスイッチ効率の良さが売りだ。具体的には,SONET/SDHやディジタル専用線からイーサネットにスイッチする際にパケット・レベルで経路制御する「パケットADM(add drop multiplexer)」と呼ぶアーキテクチャを採用した。10Gビット・イーサネットを収容すれば10Gビット/秒の性能が出るのが売りだ。

 他社の伝送装置では既存のSONET/SDH機器にインタフェースを増設して,イーサネットを収容している。ただ同期型インタフェースであるSONET/SDH向けのハードウエアは,10Gビット・イーサネットのパケット処理を前提に設計されていない。信号変換機構の処理性能が1~2.5Gビット/秒なら,それが機器全体のボトルネックとなってしまう。

−−今後の製品展開を聞かせてほしい。

 当面はメトロ・ネットワーク向け機器の開発に注力する。基幹ネットワークやアクセス回線も対象とする多面展開を考えてはいない。10Gビット・イーサネットを収容可能な伝送装置「CM-100」は,韓国や日本など帯域拡大の要求が強い地域を中心に引き合いがある。例えばKDDIから1000台以上の大規模受注を獲得した。直近の機能強化としては,2006年夏にファイバ・チャネル・インタフェースの増設モジュールを追加する予定だ。

−−トラフィックは今後も増える。10Gビット・イーサネット対応のCM-100の製品寿命をどの程度と見ているのか。

 トラフィックの増加分は映像配信によるものが多くを占めるはずだ。その点,リング型網のRPRは本質的にIPベースの映像配信に向いている。理由は二つある。まず,リング網を周回するパケットを各伝送装置が下流回線にスイッチするだけで済む。次に,配信対象となる伝送装置がある区間以外では映像配信用のパケットが流れない。100Gビット/秒のトラフィックを処理する必要に迫られたとしても問題はないだろう。