●2006 CESでは両陣営が製品を展示<BR>NECはHD DVDドライブを搭載した「VALUESTAR」を、ソニーはBDドライブを搭載した「VAIO」(今年初夏出荷予定)を展示。ソニーは外付けのBDドライブのプロトタイプも展示した
●2006 CESでは両陣営が製品を展示<BR>NECはHD DVDドライブを搭載した「VALUESTAR」を、ソニーはBDドライブを搭載した「VAIO」(今年初夏出荷予定)を展示。ソニーは外付けのBDドライブのプロトタイプも展示した
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●次世代光ディスク関連動向の予測(本誌推定を含む)
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●ハリウッド7大スタジオの次世代光ディスクへのサポート
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 2つの陣営が対峙する次世代光ディスクの規格争い。HD DVD陣営は1月5日から米国で開催された家電展示会「2006 International CES(Consumer Electronics Show)」で、勝負をかけたプロモーションを展開した。当初から強調していたコスト競争力に加え、マイクロソフトからの支持の取り付けで自規格の優位性を訴えた。まずは、今春発売のBlu-ray Disc(以下BD)対応ゲーム機、プレイステーション3(以下PS3)を牽制した格好だ。

 今回の発表で注目を集めたのは、映画などを鑑賞するための再生専用機の価格。東芝は3月に北米で発売するHD DVDプレーヤーのうち低価格モデル「HD-A1」を499.99ドル(約5万7000円)に設定。仏トムソンも同価格帯のプレーヤー投入を表明した。一方のBD陣営は、パイオニアが5月発売を表明したBDプレーヤー「BDP-HD1」の価格が1800ドル(約20万5000円)だから、破格の安さだ。

 HD DVD陣営にとって極めつけの福音が1月4日に行われたマイクロソフト会長ビル・ゲイツ氏の基調講演だ。HD DVDのインタラクティブ性をデモし、HD DVDの規格では個人的な使用に限りコピーが可能な点を強調。講演終盤には昨年発売した「Xbox 360」向けに外付けHD DVDドライブを出荷する計画も明らかにし、同社がHD DVDを強力に後押ししていく姿勢を鮮明にした。

PS3の出鼻をくじけるか

 昨年12月、東芝は、年末までの出荷を予定していたHD DVDプレーヤーの発売を延期、調整が難航しているとの印象を与えた。CESでの一連の発表はHD DVDの巻き返しとも捉えられる。

 プレーヤー出荷延期の原因は、HD DVD、BDともに採用を決めている著作権管理システム「AACS」のライセンスの供与開始が遅れているためだ。今回、東芝はプレーヤー発売の発表と同時に米アマゾンなどのWebサイトで事前予約の受付も始めた。実は、本稿執筆時の1月初旬時点でも、AACSのライセンス供与時期は決まっていない。

 AACSからのライセンス供与時期がはっきりしない段階で次々と手を打たなければならないのは、PS3に対する警戒感があるからだ。現在のDVD市場を立ち上げたのはゲーム機PS2。HD DVD陣営にとってBDに対応するPS3は脅威以外の何者でもない。PS3登場前にシェアを取るのが至上命題なのだ。

 今回、HD DVD、BD両陣営で次世代光ディスクでの映画コンテンツ提供計画が明らかになったが、コンテンツ提供者の囲い込みでHD DVD陣営は劣勢。両規格のサポートを表明しているワーナーホームビデオでは「バットマン・ビギンズ」「マトリックス」などをHD DVD、BD両方で発売する。HD DVDのみを支持する大手映画会社はユニバーサルだけだ。コンテンツ会社の幅広い支持を得るためにも、HD DVD陣営はシェアで実力を示す必要がある。いずれにせよ、今春の北米市場で、HD DVDプレーヤーがどれだけ売れるかが、本格的な規格争いの第一幕になるのは間違いない。

 一方、パソコンユーザーにとって次世代光ディスクは、地上デジタル放送などのハイビジョン映像を記録する媒体としても期待されている。しかし、パソコンが備えるべき著作権保護の仕組みはまだ固まっていない。プレーヤーのシェアの動向と共に、両規格でパソコンでの著作権保護の枠組みがどう策定されていくか。これが、次世代DVD規格戦争の第二幕となる。