既存のWindowsパソコン(PC)の動作を制限し、シンクライアント端末として利用できるようにするソフトが相次ぎ登場している。導入コストを抑えることができ、シンクライアントへ移行しやすい。ただし、製品ごとにその実現方法が異なる。
「セキュリティ強化のためシンクライアントを導入したくても、端末を移行する費用がネックになって導入を断念する企業は多い」(ネットワールドの森田晶一マーケティング本部長)。1台当たり5万~10万円程度するシンクライアント端末の購入費はもちろん、既存PCの廃棄によって残存簿価が損金として発生してしまう。
そこで、現在使っているWindowsマシンにインストールし、既存PCをシンクライアント端末として使えるようにするソフトが相次ぎ登場している。
日立製作所は2005年12月28日に「既存PC活用ソフトウェアパッケージ」を1台当たり3万240円で販売開始。ネットワールドはカナダのファロニクスと共同で「バーチャル・シンクライアント」(仮称)を開発し、2006年春に1万円程度で販売する計画だ。マイクロソフトが2005年12月21日に同社のWebサイトで無償配布し始めた「Shared Computer Toolkit for Windows XP」でも、同等の機能を実現できる(図[拡大表示])。
これまでも、OSをLinuxに変え、シトリックス・システムズ・ジャパンの製品に代表される専用サーバー・ソフトを使うことで既存PCをシンクライアント端末にするソフトはあった。しかし上記の3製品は、「Windowsをそのまま使うため、ユーザー認証用デバイスや業務用プリンタといった既存資産が使える」(日立の高橋典幸プラットフォームソリューション企画本部長)のが特徴だ。ネットワールドとMSの製品は、あらかじめ指定しておけば、ローカルでWindowsアプリを動かすことができる。
3製品とも、利用可能なアプリを限定する、ハードディスクにデータを書き込めなくする、という2点で共通するが、その実現方法は異なる。
日立製品は、同社製シンクライアント端末で動作する専用サーバー・ソフトのクライアント機能を、Windows XPに移植したもの。OSの起動と同時にクライアント・ソフトを動かし、他のソフトは起動不可にする。アプリはすべてサーバー側にあるブレードPC「FLORA bd100」上のものを使う。ローカル・ディスクにデータを書き込むことはできない。他の2製品は、管理者が設定したアプリだけを使える。ディスクへの書き込みは可能だが、再起動すると、その書き込みをすべて消し去る。OSやアプリケーションの設定情報などの変更も無効にする。万が一、不正プログラムが侵入したり、PC上に残ったデータが漏洩したりするリスクを回避するためだ。