ネットワークを運用する立場にいる人にとって,ネットワークのトラブルは避けたいもの。ただ,人間が24時間監視するのは無理な話。トラブルが発生する前にその兆候を見つけたり,トラブルが発生してしまったら,その原因がどこにあるのかをただちに教えてくれるようなツールがあるととても助かる。

 このように,ネットワークの管理を強力にサポートしてくれるのが,今回取り上げるネットワーク管理ツールだ。

SNMPを使ってネット機器を管理

図1●SNMPを使ったネットワーク管理の位置付け
図1●SNMPを使ったネットワーク管理の位置付け
ネットワーク管理には,pingコマンドによるサーバーの動作チェックから,Windowsネットの管理,セキュリティ管理,ネットワーク機器の構成・性能・障害管理などさまざまなカテゴリがある。このうちネットワークの構成・性能・障害管理のために使われる標準的なプロトコルがSNMPで,SNMPに対応した専用の管理ツールが多数販売されている。
[画像のクリックで拡大表示]

 ひと口にネットワーク管理といっても,実際にはさまざまなカテゴリがある(図1[拡大表示])。たとえば,Windowsネットの共有フォルダに対するアクセス権限の設定管理や,ネットワーク機器の資産管理,各パソコンのセキュリティ管理などだ。これらの管理カテゴリ別に,それぞれ専用の管理ツールが存在する。つまり,「ネットワーク管理ツール」といってもその範囲はとても広い。

 そこで今回は,ネットワーク管理の基本ともいえる「ネットワーク機器の管理」に的を絞り,そのための管理ツールを取り上げる。SNMP*という管理用の標準プロトコルを使って,ネットワーク機器から各種情報を読み出し,一元的に管理するためのツールである。

単機能で無料のものもある

図2●フリーソフトの管理ツールもある
図2●フリーソフトの管理ツールもある
画面はこの分野で最も有名なフリーソフト「MRTG」のもの。ほかには,RRD ToolやBig Brotherといったフリーソフトもある。
[画像のクリックで拡大表示]

 SNMPを利用するネットワーク管理ツールは数多い。ソフトウエア製品だけに,搭載する機能の種類や数は製品ごとに千差万別なため,機能面でグループ分けするのは難しい。スッキリするのは,やはり製品の価格を基にした分類である。実際に分類してみると,大きく四つのグループに分けられる。

 一つめのグループは,フリーソフトとして提供されている無料の管理ツール。代表的なものに,MRTG*RRD TOOL*がある(図2[拡大表示])。

 SNMP管理ツールと聞いて,MRTGをまっ先に思い浮かべる読者は多いかもしれない。ただし,このグループのツールは後述する市販製品に比べて機能が少ない。ネットワーク機器から情報を読み出して,それをグラフ化するソフトといえる。

 これ以降のグループはすべて市販製品で,SNMPを使って多数のネットワーク機器をきめ細かく管理するために必要な三つの基本機能を備えている。その三つとは,(1)管理対象となるネットワークの構成を調べて管理する「構成管理」,(2)管理対象機器の稼働状態を定期的にチェックする「性能管理」,(3)障害が発生した際にいち早くそれを検知して管理者に警告を出す「障害管理」---である。

 どの市販製品も上記三つを満たしている点では同じ。ただし,製品ごとに機能の違いは大きい。構成管理一つとっても,処理の手順や内容,使い勝手を向上させる工夫などに違いがある。具体的にどういった違いがあるのか,残りの3グループをざっと見ておこう。

 二つめのグループは,10万円以下の価格帯の製品である。代表的な製品には,アイ・エス・ティが販売する「Netkids」やキヤノン・システムソリューションズの「NetworkView2」などがある。

 このグループの製品は,ほとんどがWindows上で稼働するソフトである。また,基本となる3機能は備えているものの,たとえばツールが自動作成したネットワーク構成図をあとから管理者がカスタマイズする機能がなかったりするなど,機能面で比較的シンプルな製品が多い。冗長化や遠隔監視など大規模ネットワークの管理向けの付加機能も搭載していない。そういう意味では,おもに中小規模のネットワークを対象にした*製品と言えるだろう。

高価な製品は付加機能が充実

 三つめは,数十万~100万円程度*の製品グループ。こちらは,低価格製品と比べると,グラフの描画機能やリポート作成機能が充実していたり,ログの管理や遠隔監視といった大規模ネットワークの管理向けの機能を豊富に搭載している製品が多い。このため,おもに中~大規模のネットワークを対象にした製品と位置付けられる。

 このグループの代表的な製品としては,ケイ・ジー・ティーの「WhatsUp Professional」やデジタルアーキテクトの「SNMPc」などがある。このほかにも,多数のネットワーク機器ベンダーやメーカーが製品を販売している激戦区のグループだ。対象OSは,二つめのグループと同様に,Windows対応のものが多い。

 四つめは,標準的な構成での価格が100万円を大きく超える製品が属するグループだ。こちらも中~大規模ネットワークがおもなターゲットであるという点は三つめのグループと同じ。違いは,三つめのグループが製品単体でネットワークを管理することを前提としている製品が多いのに対して,こちらは,ほかのさまざまな管理ツールと連携して使えるという点である。資産管理やクライアント管理,セキュリティ管理などを担当するツールと連携して,企業内のあらゆる情報を管理する統合管理システムの一部として使えることに主眼が置かれている。

 Windows以外にUNIXやLinuxなど多くのOSに対応する製品が多いのもこのグループの製品の特徴である。代表的な製品として,日本HPの「OpenView Network Node Manager」,日本IBMの「Tivoli Netview」や富士通の「SystemWalker Network Manager」などがある。