写真1●MacWorld Expo San Francisco 2006基調講演でのSteve Jobs氏(左)と米IntelのPaul Otellini CEO。<a href="http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060111/227093/" target="_blank">【MacWorld2006】「従来機よりも4倍高速」---Steve Jobs氏の基調講演レポート</a>より転載
写真1●MacWorld Expo San Francisco 2006基調講演でのSteve Jobs氏(左)と米IntelのPaul Otellini CEO。<a href="http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060111/227093/" target="_blank">【MacWorld2006】「従来機よりも4倍高速」---Steve Jobs氏の基調講演レポート</a>より転載
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写真2●Intel社の新ブランドとロゴ。マスター・ブランドは「Intel Inside」から「Intel.Leap ahead」に変更。「Viiv」や「Centrino Duo」といったプラットフォームの新ブランドを設け,各プロセサのロゴも刷新した
写真2●Intel社の新ブランドとロゴ。マスター・ブランドは「Intel Inside」から「Intel.Leap ahead」に変更。「Viiv」や「Centrino Duo」といったプラットフォームの新ブランドを設け,各プロセサのロゴも刷新した
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 年明け早々の5日~8日,ラスベガスで「2006 International CES」が開催された。米Intelはここで,新プロセサ「Core」や,ホーム・ネットワークの技術基盤「Viiv」などを正式発表(関連記事)。13年振りのプロセサ名の変更や,動画コンテンツの包括的な戦略発表で話題を呼んだ。

 また同社は新たなブランド・ロゴとスローガンも発表。おなじみの「Intel Inside」に代えて「Intel.Leap ahead」(日本語は「インテル。さあ,その先へ。」)とした。これはマーケット重視のプラットフォーム・ソリューションを提供していく企業としての進化を示すものという。「プロセサやチップセット,ソフトウエアなどのプラットフォームを支える技術を統合することで,システム性能やユーザーの利用体験を総合的に向上させる」(同社)という(Intel社の発表資料)。今後は,PCビジネスからコンシューマ製品へと大きくシフトする。そんな新戦略に伴うブランドの再構築だ(英Reutersの記事

 そしてもう1社,今大きな話題を呼んでいる企業がある。今回の本題である米Apple Computerだ。1月10日に「MacWorld 2006」でApple社が発表したのは同社初のIntelプロセサ搭載Macintosh(Intel Mac)。iMacと,PowerBook改めMacBook Proである(関連記事写真1)。いずれもIntel社が新ブランド展開を始めたばかりの「Core Duo」(開発コード名:Yonah)を搭載。iMacは即日出荷開始,MacBook Proは2月に販売開始すると発表した。基調講演でApple社CEOのSteve Jobs氏は,iMacは従来機に比べ性能が2~3倍向上し,MacBook Proでは4~5倍向上したと説明。PowerPC搭載機との性能の違いを強調した。

Appleが異例の新旧並行販売

 Apple社がIntelプロセサへの移行計画を発表したのは2005年6月のこと(関連記事)。当時Apple社は,Intel Macの登場を今年の6月ごろと予定していたが,その後開発を急ピッチで進め,半年も早めてしまった。またJobs氏は今回,これまで2007年内としていたIntelプロセサへの全面移行を2006年内に前倒しするとも発表。PowerPCからの脱却を一気に進める計画を明らかにした。

 新製品では,そんな戦略を価格にも反映させた。新iMacの米国での価格は2モデルとも従来のiMacと同じ。パフォーマンスは倍増したが,お値段据え置きというわけである。MacBook Proの方は,今回15インチ・モデルを2機種のみ発表した。現行のPowerBookは12インチ,15インチ,17インチと合計3モデル構成だが,MacBook Proでは今回15インチ・モデルに1.67GHzと1.83GHzの2つのモデルを設定。前者は現行の15インチ・モデルと同じ価格,後者は現行の17インチ・モデルと同じにした。ただし英国や日本では新モデルの方が若干高くなっている(5000円~1万円程度)。なおMacBook Proの12インチと17インチのモデルについては今回明らかにしなかった。

 今回Apple社は異例の販売形式をとる。これまで同社は新製品の出荷開始と時を同じくして旧モデルの販売を取りやめてきた。しかし今回はPowerPCマシンも継続して販売する。これに関してApple社からは何の説明もないが,単に在庫の問題というのがアナリストの見方のようである(米CNET News.comの記事)。これまで,新製品への移行に際して在庫調整をしっかり行ってきた同社にとっては実に異例なことである。

ユーザーを悩ますIntel Mac

 そして,そのことが今ユーザーを悩ませている。Mac関連のニュース・サイト「MacInTouch」にはさっそく特設サイトが設けられ,コラムニストHenry Norr氏による詳細な考察が載っている。それによると,Intel Macには一長一短あり,乗り換えるのは時期尚早というのが同氏の結論のようである。

 その理由の1つは,アプリケーション。Apple社は今回Intel Macでネイティブ動作するOS「Mac OS X 10.4.4」と,同じくネイティブ動作の「iLife '06」(関連記事)をリリースした。このiLife '06には,Webサイトやブログを手軽に作成できる「iWeb」,25万枚の写真が保存でき,動作も軽快な「iPhoto 6」,Podcast Studioと呼ぶポッドキャスト番組を制作できる機能の付いた「GarageBand 3」(関連記事)などが含まれる。これらすべてが1つのパッケージに入って79ドル。リーズナブルである。

 しかし同氏は,世の中にあるほとんどのMac用ソフトはまだUniversalアプリケーション(PowerPC/Intelの両プロセサでネイティブ動作する)ではないと指摘する。またほとんどの開発者がUniversalアプリケーションのリリース時期について明らかにしていない状況にある。

 既存アプリケーションは,Mac OS X 10.4.4の「Rosetta」(トランスレーション・プロセス)で動作することになる。つまりIntel Macを買ったユーザーは少なくともこの先数カ月はPowerPCネイティブ・アプリケーションを継続利用し,Rosettaのお世話になることになる。

 ところがRosettaを介すとPowerPC Mac環境よりも遅くなってしまうアプリケーションがあるのだ。またRosettaは,Final Cut ProのようなPowerPC G5プロセサの処理を要求するものには対応しない(Apple社の技術資料)。さらに,Mac OS 9などのClassicアプリケーションも動作できない(もちろんClassic環境も利用できない)。

 アプリケーション以外にも一長一短があると同氏は説明する。