緑がいっぱいの筑波大学。大学の森に迷い込むと出られなくなってしまうので要注意。
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 2004年の初夏、私が作ったサイト「Skypeやろうぜ」は順調にアクセス数を増やしていました。アクセス数の増加に一番貢献していたのは、検索エンジンです。当時、SEO(検索エンジン最適化)がうまく行って、検索サイトGoogleで「Skype」というキーワードで検索すると、「Skypeやろうぜ」はSkype社の公式サイトの次、なんと2番目に出てきたのです。

 このSkypeやろうぜには、インストール方法の紹介とともに、私のSkypeIDを書いておきました。アクセス数が伸びると同時に、Skypeを試したさまざまな人から私にSkypeで“電話”がかかってきました。新しい技術に興味を持った人から、たまたま見つけた人まで幅広い人が私にSkypeしてきたのです。

 ところで、Skypeのバージョン1.4までのデフォルトの着信音は、「ジリリリリ!」と黒電話が鳴っているような音でした。この音がいきなり鳴ると、かなり心臓に悪い。Skypeでは「着メロ」も設定できるので、着信音を変えることをお勧めします。

 話を戻しましょう。ある日、私のSkypeがいつものように「ジリリリ!」と甲高く鳴り響きました。私にSkypeをしてきたのは、現在Skype社で働いているVinceさんでした。Vinceさんは、Skype社のCEO Niklas氏を日本に迎える準備をしていたところだったようです。日本でSkypeに詳しい人に会わせたいと考えていたVinceさんは、検索サイトGoogleで「Skype」を検索。そこにヒットしたのは、私のサイト「Skypeやろうぜ」でした。Vinceさんは早速、サイトに書かれていた私のSkypeIDあてにSkypeしてきたのです。

 突然のお誘いに、私は本当に驚きました。私はSkypeのサイトを作ったのはSkypeの情報交換がしたいから、SEOをやったのは少しはアクセス数を増やしたいなというくらいです。まさかSkype社のCEOに会わないかという電話がかかってくるなんて思ってもみませんでした。

 よく考えて見れば、これもSkypeのおかげです。今までの電話だったら、Webサイトで電話番号を公開しにくいし、公開してある電話番号に電話をかけるのは億劫に感じるでしょう。ところがSkypeは、Webサイトからワンクリックで気軽に電話がかけられる。本当にインターネットの世界の電話なんだなと実感しました。こうして、私はSkype社のNiklas CEOに会うことができたのです。

 Niklasさんと会って、私は大きな感銘を受けました。Niklasさんが本当にビジネスとして成功することを狙って、Skypeを提供していることがわかったからです。Niklasさんは、P2P技術を電話というアプリケーションに使えるのではないかと思いつき、プログラマにソフト開発をお願いしたそうです。自分で作ったわけではなくて、最初からビジネスとしてP2Pを電話に使おうという発想です。

 ビジネスをしている人にとっては、これは当たり前かも知れません。しかし、私はP2Pの関係者でこういう人に会ったことがありませんでした。P2Pソフトの作者の何人かに会ったことがありますが、彼らは自分で作ったソフトの素晴らしさを語り、ソフトの出来栄えに満足気で、ほとんどビジネスのことは考えていなかったのです。

 以前から私は、P2Pは高速で柔軟な通信と広大で近いネットワークを実現してくれる技術だと興味を持っていました。ただ、P2Pのよいアプリケーションがわからず、頭の中がモヤモヤした状態でした。Skypeは、電話というP2Pにピタリとはまるアプリケーションを見せてくれ、私のモヤモヤは一気に晴れました。Niklasさんと話しているうちに、この人はただものではないなあと、ひしひしと感じました。

 Niklasさんとお会いした詳しい様子は、「Skyepやろうぜ」に掲載しているので、よろしければご覧になって下さい。


著者紹介
 著者の池嶋 俊氏はSkypeまとめサイト「Skypeやろうぜ」の管理人。プログラマの観点からSkypeを解説し、新しい使い方を提案する。Skypeの技術を解説した『入門 Skypeの仕組み』(日経BP社刊)の著者。また、筑波大学に通う大学生。サークル活動をしたり、学生ベンチャーをしたりドタバタな大学生活を楽しむ。この記事へのコメントはSkypeやろうぜ内のページでも受けつけている。