生産管理ソフト・ベンダーのクラステクノロジー(東京都渋谷区、四倉幹夫社長)が元気だ。欧米ソフト・ベンダーが圧倒的に強い生産管理ソフト市場で、98年に発売したECObjectsは日本の有力電機メーカーや自動車メーカーなど100社超で稼働する。昨年末、米IBMのISV(独立系ソフト・ベンダー)になったことを契機に海外進出にも乗り出した。日本発の業務パッケージが海外市場に打って出るケースは極めて稀なことである。

 同社は96年にオブジェクト指向のクラスライブラリの開発・販売を目的に設立。ここで開発した部品をベースに98年に生産管理ソフトECObjectsを発売した。四倉氏は「SAPやオラクル、ダッソなどがこの市場で出てきている激戦区」と認識しているが、「生産管理はこの40年間、進歩していない。米自動車メーカーが確立した大量生産、大量購買の考え方にそってMRP(資材所要量計算)が出てきた。ところが、その枠組みから一歩も出ていない」(四倉氏)。そこにビジネスチャンスがあると判断し、「欧米にないエンジニアリング・チェーン・マネジメントという独自のコンセプトを考えた」(同)という。

 具体的には日本や中国、韓国、米国など国内外の工場をリアルタイムで結合させるもの。在庫を過去から現在、未来という連続で管理し、かつ購買や設計など部門間でデータを共有できる仕組みにした。それを支えるのが統合化部品表というデータベースである。

 クラステクノロジーはこの商品開発に約20人(外注を含めると40人超)の技術者を投入し、年間5億から6億円を開発費に振り向けている。全社員約100人、売上高約13億円(05年3月期)からすると、開発にかなりの人員と投資額を投じているといえるだろう。今期はユーザー数の増加でライセンス収入が増えることから、15億から16億円の売り上げを見込む。06年度か07年度には20億から30億円に増やす計画である。

 だが、ITベンチャーはパッケージ開発・販売で挫折してしまうことが多い。「現場で使ったものを焼き直してパッケージを開発するケースが多いからだ。これだと他社に適用しようとしても歪みが取れない。概念からきちんと練り、『こうあるべきだ』という理想系からパッケージを開発すべきだ」(四倉氏)。そこが欠落しているというのだ。そのためには技術力に加えて信念、情熱、さらには資金力も要る。資金面では当初、NECにOEM(相手先ブランドによる生産)供給できたことが大きく影響する。

 加えて、大手ITベンダーや有力ITサービス会社を販売代理店に獲得できたことも受注獲得に効いた。代理店には日立製作所、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立情報システムズ、日本IBM、CSK、新日鉄ソリューションズ、伊藤忠テクノサイエンス、都築電気、NECトータルインテグレーションサービスなど10数社にのぼる。しかも、日立ソフトやNEC、日立、アイ・ティ・フロンティア、ソレキア、京セラコミュニケーションシステムは出資もする。

 国内外で更なるシェア拡大を目指すうえで欠かせないのが品揃えだ。そこでクラステクノロジーは生産管理に特化し、会計や販売など生産管理以外のソフトはパートナ企業に開発してもらうという協業体制を考えている。それを推進するために、ECObjectsを共通基盤に仕立て、この上で各種ソフトを開発する。四倉氏によると、SOA(サービス指向アーキテクチャ)的なもので、その第一弾は、日立ソフトが開発した原価管理システムである。「生産管理に原価管理など様々なシステムを組み合わせることで、SAPなどに対抗できるようになる」(四倉氏)。その実現に向け四倉社長は行動を開始した。

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