▼Exchange Serverの次期版である「Exchange 12」(開発コード名)が,2006年末から2007年初めに登場する。メールの保存機能などが強化され,マイクロソフトがウイルスやスパム・メールを取り除くASPサービス*も提供する。
▼旧版のExchange Server 5.5とExchange 2000 Serverは,2005年末でそれぞれサポートが縮小される。スパムの増加などメールを取り巻く環境が大きく変化しているため,新版への移行を検討したほうがよさそうだ。
「Exchange 12」(開発コード名)は,現行のExchange Server 2003が2003年9月に出荷開始されてから,3年ぶりのメジャー・バージョンアップとなる。米MicrosoftでExchange Serverの責任者であるDavid Thompson副社長(写真[拡大表示])が来日し,その詳細を明らかにした。
次期版では,スパム・メールの増加やIP電話の普及など,最新状況に対応するための新機能が搭載される(表1[拡大表示])。Thompson副社長は,「メッセージングの環境が大きく変わっている。次期版のExchange 12だけではなく,現在のExchange Server 2003に対しても投資を継続して,新機能を提供していく」と説明する。また,スパムやウイルスを除去する有償サービスをマイクロソフトが提供する計画もある。
正式出荷は2006年末以降
Exchange 12は,一部のテスターに限定して2005年12月14日に最初のベータ版が提供された。多くのユーザーがベータ版を入手できるのは,2006年中頃の予定である。その後,正式出荷が2006年末から2007年1~3月に予定されている(図1[拡大表示])。さらに,Exchangeのクライアント・ソフトである次期版のOutlookを含む「Office 12」(開発コード名)もExchange 12と,ほぼ同時期に出荷される見込みである。
Exchange 12がターゲットとしているのは,Exchange 2000 ServerまたはExchange Server 2003のリプレースである。Exchange Server 5.5は,2005年12月末に延長サポートが切れ,2006年1月以降にサポートを受けるには,高額なカスタム・サポートを契約しなければならない。Exchange Server 5.5のユーザーはExchange 12を待たず,なるべく早めにExchange Server 2003へ移行すべきだろう。Exchange Server 2003は,2005年10月にService Pack 2が公開され,PDA(携帯情報端末)からの情報漏えい防止機能やスパム対策機能,メールボックス容量などが強化された(詳細は別掲記事を参照)。
一方,Exchange 2000 Serverも2005年末でメインストリーム・サポートが終了する。延長サポートを利用しつつ,Exchange 12への移行を目指すか,早期にExchange Server 2003へ移行するかを決断しなければならないだろう。
役割管理で手間を省く
Exchange 12では,管理性や処理能力の向上,エンドユーザーの使い勝手の向上などの新機能が盛り込まれている。
まず管理面では,サーバーを“役割”で設定できるようになる。既にWindows Server 2003が「サーバーの役割管理」で,Active DirectoryやDNS(ドメイン・ネーム・システム)サーバーを簡単に設定できるようにしている。同じくExchange 12の役割には,SMTP(簡易メール転送プロトコル)の転送処理をする「エッジ」,社内メールの転送を処理する「ブリッジヘッド」,ボイス・メールやファクシミリを管理する「ユニファイド」,Webブラウザからのアクセスなどを管理する「クライアント・アクセス」,メールを管理する「メールボックス」,文書の共有フォルダを管理する「パブリック・フォルダ」がある。
このうちユニファイドでは,電話のボイス・メール(留守番電話機能)とファクシミリも管理可能にする。従来は,サード・パーティ製品を利用すれば,ボイス・メールやファクシミリもExchangeで管理可能だったが,Exchange 12の標準機能として提供される。
電話の構内交換機とExchange Serverとの接続は,サード・パーティ製の接続装置を利用する方法や,IP電話制御用プロトコルであるSIP*を利用する方法が検討されている。
64ビット版しか提供されない
さらに,Microsoftは2005年11月,Exchange 12を64ビット版でしか提供しないことを発表した。また,従来から内部データベースとして利用していた「Jet」をExchange 12でも引き続き利用する。以前は,SQL Serverをベースにした新しいデータベースを採用する「Kodiak」(開発コード名)を計画していたが,既に中止が決まっている。Jetを引き続き利用するメリットとして,Thompson副社長は「可用性はレプリケーション機能で確保されているし,拡張性は64ビット化で対応できる。プログラマにとっても,従来のインターフェースが利用できるほうがよいだろう」という。
このほかExchange 12には,公開済みのツールが標準搭載される予定である。Exchange Server向けのツールとしては,例えば,Exchangeの設定を最適化する「Exchange Server Best Practices Analyzer Tool」,Exchangeのボトルネックを見つける「Exchange Server Performance Troubleshooting Analyzer Tool」などが無償提供されている。どれがExchange 12に搭載されるかは未定だが,既存のツールはいずれもExchange 12で動作可能になる。
ウイルス/スパム対策を外注可能に
また,Exchange 12が登場するころには,メールのウイルス対策やスパム除去をマイクロソフトに外注することが可能になる(図2[拡大表示])。これにはMicrosoftが2005年9月に買収したFrontBridge Technologiesの技術を利用する。現在,米国と欧州で,既にサービスが開始されている。「開始時期は未定だが,日本でもぜひサービスを導入したい」(Thompson副社長)という。
FrontBridgeは,ユーザー企業向けのメールを受け取って,ウイルスやスパムの除去,メールの保存をASPサービスとして提供するものである。その後,安全なメールだけをユーザー企業のメール・サーバーへ転送する。ユーザー企業からメールを送信するときもFrontBridgeのサーバーを経由し,ウイルスの除去と,送信メールのコピーの保存がなされる。また,ユーザー企業側のExchangeサーバーに障害が発生したときは,Webブラウザ経由でFrontBridgeへアクセスすると,メールの送受信ができる。
PDAの情報漏えい防止機能などを含む
|