図 10GBAST-T用に新しく規格化されたオーグメンテッド・カテゴリ6ケーブル
図 10GBAST-T用に新しく規格化されたオーグメンテッド・カテゴリ6ケーブル
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 10GBASE-Tは,銅線のLANケーブルを使う10Gビット/秒のイーサネット規格である。具体的な技術仕様を決める特別委員会(IEEE802.3anタスク・フォース)での仕様策定は終わり,後は上位の作業部会(IEEE802.3ワーキング・グループ)などの承認を待つ段階。予定通り2006年7月までに標準規格が決まる見込みである。

 10GBASE-Tは,メタル心線のUTPケーブルを使い,10Gビット/秒の全2重通信を実現する。伝送できる距離は最大100m。これはUTPケーブルを使うギガビット・イーサネット規格「1000BASE-T」と同じ距離である。

 伝送速度を高速化すると,やりとりする電気信号の周波数が上がり,信号は減衰しやすくなる。その結果,伝送距離は短くなる。10GBASE-Tでは,使うケーブル,信号の変調方式や符号化方式の工夫によって,1000BASE-Tと同じ100mの伝送距離を確保した。

 10GBASE-Tで使われるケーブルは,「カテゴリ6」(Cat6),「オーグメンテッド・カテゴリ6」(Cat6a),「カテゴリ7」(Cat7)——の3種類。Cat6とCat7は,従来からあるケーブルだ。Cat6は,エンハンスト・カテゴリ5(Cat5e)と並んで1000BASE-Tで使われている。10GBASE-Tで利用するには周波数特性が足りないので,最大伝送距離は55mになる。Cat7は,ノイズを避けるためにより対とケーブル全体を金属箔や金属メッシュでシールドしている。

 これらに対しCat6aは,10GBASE-T用に新たに決められたもの。基本的な構造は従来の規格と共通だが,断面が縦長になり,ら旋状にねじられた構造になっている点が異なる(図)。

 このように変わった形状になっているのは,「エイリアン・クロストーク」と呼ばれるノイズに対処するため。エイリアン・クロストークとは,隣り合ったUTPケーブルの間で伝わるノイズのことである。Cat6aは,断面を縦長にすることで,異なるケーブル内の心線が接近するのを防ぎ,エイリアン・クロストークが乗らないようにした。こうした工夫で,Cat6aケーブルは500MHzまでの信号を通せる。

 さらに,10GBASE-Tは,変調方式と符号化でも工夫をこらしている。10GBASE-Tは,変調方式に「PAM(pulse amplitude modulation)16」という方式を採用する。これは,ディジタル・データを電気信号に変換する際に,電圧値を16段階に変えるもの。従来の1000BASE-Tでは,電圧値を5段階に変える「4D-PAM5」という方式を使っていた。これで運べるビット数は大幅に増やせる。

 しかし,その一方で,受信側で判断すべき電圧差が小刻みになり,ちょっとしたノイズでもエラーが発生してしまう。そこで,10GBASE-Tでは「LDPC」(low density parity check)と呼ぶ誤り訂正技術を盛り込んだ符号化方式を採用した。この方式は,1000BASE-Tの符号化方式である「8B1Q4」で採用されている「トレリス符号」という符号化方式よりも誤り訂正能力が高いとされている。