米運輸保安局(TSA)は,先のとがった物を旅客機に持ち込むことに関する規制を緩和しつつある。

 私は,TSAが採用している「行き当たりばったり」なやり方にもよい面があると思う。TSAが搭乗客のノート・パソコンを鞄から出させたり,靴を脱がせたり,ポケット・ナイフを没収したりする規則を今後も残すかどうかは知らない(ポケット・ナイフの取り扱いについては,記事によって異なることが書いてあった)。

 これはよい変化であるが,今さらという気もする。航空機を狙うテロ攻撃は,誰もが心配している「映画のストーリーにあるような脅威」とは異なっている。

 この件に関する最も驚くべき反応は,客室乗務員協会(AFA)の広報担当者Corey Caldwell氏による「旅客機の備品として武器の搭載を許可すると,パイロットは安全に飛行機を着陸させられるが,客室は血の海になる」という発言だ。

 同氏の発言はどのくらい誇張されているのだろうか。

 私は著作「Beyond Fear」やあちこちで,「優先課題の概念(notion of agenda)」という考え方と,これがセキュリティ上のトレード・オフにどう影響するかについて書いてきた。客室乗務員の立場でみると,搭乗客に面倒な検査を強いることは完全に妥当なトレード・オフとなる。わずかとはいえ検査で自分たちの安全を高められるし,コストも生じない。検査に必要なコストは,客室乗務員ではなく搭乗客が負担する。一方,搭乗客には安全確保のほかにも,コスト,手間,時間といったより多くの優先課題がある。したがって,搭乗客としては賛同できるセキュリティ規則の変更について客室乗務員が反対するのは,完全に納得できる行為だ。

映画のストーリーにあるような脅威:
http://www.schneier.com/essay-087.html

Caldwell氏の発言:
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/...

Copyright (c) 2005 by Bruce Schneier.


◆オリジナル記事「New Airplane Security Regulations」
「CRYPTO-GRAM December 15, 2005」
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◆この記事は,Bruce Schneier氏の許可を得て,同氏が執筆および発行するフリーのニュース・レター「CRYPTO-GRAM」の記事を抜粋して日本語化したものです。
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◆Bruce Schneier氏は米Counterpane Internet Securityの創業者およびCTO(最高技術責任者)です。Counterpane Internet Securityはセキュリティ監視の専業ベンダーであり,国内ではインテックと提携し,監視サービス「EINS/MSS+」を提供しています。