NECや富士通などの大手ITベンダーが、日本版SOX法(企業改革法)対策サービスに乗り出した。最も負担の大きい業務手順の文書化支援を中心に提供する。システム構築の経験を生かすことで、先行するコンサルティング会社の半額で提供できると判断した。
「2006年から需要が拡大するのは間違いない。3年で300億円の売り上げが見込める」。NECマーケティング推進本部の大畑毅シニアエキスパートは、2005年11月に開始した日本版SOX法対策サービスに関してこう話す。
TISも11月に、日本版SOX法対策サービスの提供を開始。現在は個別に対応している富士通は、2006年初頭にサービスを正式に提供する(表[拡大表示])。続いてNTTデータやCSKが、来年にサービスの提供を本格化する計画だ。
日本版SOX法は、財務報告書に不正や誤りがないよう経営者に内部統制の有効性評価を求めるもの。早ければ2008年3月期の決算から適用される。日本版SOX法対策サービスは、リスク診断などのコンサルティングやドキュメント管理システムの構築などさまざまある。その中で、ITベンダー各社が提供するサービスは、業務の文書化支援が中心となる。
SOX法では内部統制の有効性を評価するために、購買や販売、営業といった業務の手順を示す文書や、その手順における不正や誤りを防ぐ方法を記述した文書を作成しなければならない。この文書化作業はSOX法対策の中でも最も負担が大きく、「大企業では、担当者20人以上が半年以上かけて進める」(TIS事業開発室の松浦孝治事業推進統括マネジャー)。
文書化支援サービスは、この負荷の軽減を目指したものだ。現状では監査法人やコンサルティング会社がサービスを提供しているが、料金は安くない。公認会計士に依頼すると1日当たり10万~20万円程度かかり、大企業では数億円を要することもあるという。
後発となるITベンダーは、料金が安価な点を文書化支援サービスの売り物にする。「同内容のサービスを公認会計士の半額程度の料金で提供できる」(富士通コンサルティング事業部の小村元プリンシパルコンサルタント)とするITベンダーが多い。
これが可能になるのは、「文書化の作業は、業務内容をヒアリングし、文書に落とし込む要件定義の作業と共通点が多い。SEの持つスキルやノウハウを生かせる」(富士通の小村プリンシパルコンサルタント)からだ。このため、公認会計士やコンサルタントに比べて単価の安いSEを文書化支援の要員にシフトできるとしている。
ただし本来なら、財務報告書の正確性を求めるSOX法にのっとったサービスを提供するのは、財務の専門家が望ましい。この点は各社とも認識しており、富士通は「財務に関する部分は公認会計士のチェックを受ける」(小村プリンシパルコンサルタント)。TISは、コンサルティング会社のプロティビティジャパンと協力して財務面のコンサルティングを実施する。NECは「財務に関してアドバイスする際は、監査法人の担当者に同席してもらうよう、顧客企業にお願いしている」(コンサルティング事業部の菊地倫子マネージャー)。各社は並行して、日本版SOX法の考え方を基に業務フローを記述したり、リスクを診断できる人材の育成を急ぐ。