●不具合による運航への影響を最小限にとどめる
●不具合による運航への影響を最小限にとどめる
[画像のクリックで拡大表示]

 日本航空は2006年4月、整備支援情報システムを刷新し本格稼働させる。製造元の米ボーイングと共同開発した「AHM(エアライン・ヘルス・マネジメント)」を導入。2004年1月から試験運用してきた。

 日本航空では、2005年春ごろから整備不良によるトラブルが相次いだ。この影響で2005年の中間期決算で国内線の営業収益が前年比1.3%減に悪化。これに対して、全日空は4.9%の増加と、ライバルに差をつけられ、信頼回復が急務となっていた。AHMの導入によって、出発の遅延など運行への影響を防ぐことを目指す。

 AHMの機能は2つある。飛行中に発生した機体の不具合情報をリアルタイムで監視することと、過去の不具合履歴を蓄積して整備担当者の分析を支援することである。

 機体に設置した装置が飛行中に発生した不具合をAHMへ即座に送信する。例えば、油圧系統など次の運航までに修理が必要な場合、整備部門に設置した端末の画面に不具合個所や整備手順書などの情報を一元的に表示。これによって、交換準備などの指示が早く出せる。

 AHMに蓄積した不具合情報は、自社に加えて、ほかの航空会社も含めてボーイング社が過去に収集した情報が含まれる。整備担当者は、これらの情報を様々な切り口で検索し、不具合の発生状況を分析する。例えば、部品名で検索すると、ほかの機体で発生した同じ不具合の情報を一覧表示する。不具合が発生する部品に偏りがあれば、定期点検の際に重点的に調査するといった対策が打てる。

他社の解決事例も参照

 さらに、ほかの航空会社の対応状況も管理する。「当該部品だけを交換しても治らないことがある」(整備本部技術部電装技術グループの濱田真悟課長補佐)からである。他社事例を参考に、根本的な問題解決までの時間を短縮することを目指す。

 このほか、AHMには不具合が運航に与える影響度を判定する機能がある。運航中に不具合が発生した場合の遅延時間などを勘案して3段階で判定する。

 例えば、衛星通信システムのように、同じ機能の部品を複数搭載して冗長性を高めている場合、1系統が故障しても、すぐには交換しなくてもよい。こうした部品では、「23/39」といったように、あと何回支障なく飛行できるかを表示する。