データクラフトアジアのウィリアム B.G. パッドフィールドCEO
データクラフトアジアのウィリアム B.G. パッドフィールドCEO
[画像のクリックで拡大表示]

 データクラフトアジアは,シンガポールと香港に本社を構えるネットワーク・インテグレータ。アジア太平洋地域13カ国の大手金融機関や通信事業者を中心に,ネットワーク,セキュリティ,コール・センターの構築などを手がけている。同社のウィリアム B.G. パッドフィールドCEO(最高経営責任者)に,ビジネスの現状や今後の展望などを聞いた。(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション

--さまざまなインテグレーションを手がけているが,どの分野が好調か。

 セキュリティが急成長している。特にインターネット関連のビジネスを提供する企業からの受注が多い。単にセキュリティ対策製品を販売するだけでなく,ポリシー策定などのコンサルティングも行っており,これが売り上げを伸ばしている。

 2005年9月には親会社のディメンションデータ(本社:南アフリカ)が,オーストラリアの運用管理ツール・ベンダーのBellerephon Groupを買収した。これにより,セキュリティ・パッチの管理を効率化するソリューションも提供できるようになった。米マイクロソフト製品のユーザーが主な対象だ。ただし日本では未提供。今後,日本国内でも提供する可能性はある。

--今後,伸びが期待できる分野は何か。

 通信事業者向けソリューションだ。背景には,世界中で事業者間の競争が激しくなっていることがある。例えばインドではユーザーのほとんどがプリペイド式携帯電話を利用しているため,別の事業者に乗り換えやすい環境にある。もし競合する事業者が良いサービスを出せば,一晩で一気にユーザーが移るといったことも起こり得る。

 こうした状況で勝ち残っていくには,常に魅力的なサービスを提供し続けなければならない。そのためには,今後はデータと音声,映像を統合したトリプルプレイのサービスが中心になってくる。トリプルプレイの時代になると,サービスの投入頻度が加速化すると考えられる。これまでは年に1~2回程度だったが,今後は年に10回や20回といった頻度に増えていくだろう。

 その際,通信事業者にとって重要になるのが,付加価値の高いサービスをいかに迅速に提供できるかだ。そこで我々は,マイクロソフトの通信事業者向けフレームワーク「CSF」(Connected Services Framework)を活用したイングレーションを展開している。CSFを利用し,これまでデータや音声,映像で別々に構築してきたシステムを連携しやすくするサービス基盤を構築する。

 さらにトリプルプレイ時代には,課金処理も重要になる。音声だけでなく映像など他のサービスもセットで課金しなければならないからだ。しかも,FMC(fixed mobile convergence)で固定と携帯の境界線があいまいになりつつある。我々はこうした複雑な課金処理を効率化するためのソリューションも提供している。既にインドの事業者で成功例があり,CSFの導入事例をどんどん増やしていきたい。

--コール・センター事業も好調のようだが。

 最近は米国や英国の企業が,インドやフィリピン,マレーシアにコール・センターを設置してコスト削減を図るケースが増えている。特にインドには大規模なコール・センターが多数あり,4000席規模のセンターも珍しくない。

 実はコール・センターのトリプルプレイ化も進んでいる。最初はメールやチャットなどテキスト・メッセージで問い合わせに対応するだけだが,それでも解決できない場合などには音声や映像を駆使して回答するといった具合だ。米イーベイによるスカイプ・テクノロジーズ買収や,米マイクロソフトによるテレオ買収なども狙いはそこにある。どの企業もトリプルプレイによる顧客対応の重要性に気付いているのだろう。