図 MACフレームをMACフレームでカプセル化する新技術「EoE」(Ethernet over Ethernet)
図 MACフレームをMACフレームでカプセル化する新技術「EoE」(Ethernet over Ethernet)
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 広域イーサネット・サービス向けに大型のLANスイッチが搭載し始めた技術。広域イーサネット・サービスとは,離れた拠点間で,イーサネットのMACフレームをそのままやりとりできる通信サービスのことである。

 この広域イーサネット・サービスでは従来,標準のバーチャルLAN(VLAN)技術を拡張した「拡張VLAN」という技術を使ってサービスを実現するのが一般的だった。ただし,拡張VLANを使う広域イーサネットには問題が二つある。

 一つは,網内のLANスイッチの負荷が増大してしまうことだ。拡張VLANを使う広域イーサネットのバックボーンを支えるLANスイッチは,ネットワークにつなぎこまれた拠点にある端末同士が相互に通信できるように,すべての端末のMACアドレスをアドレス・テーブルに記載しておく必要がある。そのため,ユーザー企業が増えて端末数が多くなると,それだけアドレスの学習と検索における負荷が高くなってしまう。

 もう一つの問題は,MACフレームがループした場合に,対応が難しくなる点である。LANスイッチには,ループ構成になってもMACフレームがループしないようにする技術としてスパニング・ツリーや機器ベンダーが独自に搭載する冗長化プロトコルを備える。ただし,こうした技術を使っていても,ソフトウエアのバグやユーザーの設定ミスなどでループが発生してしまうケースがある。ひとたびフレームがループすると,網内がフレームであふれ返り,網がパンクする事態になってしまう。

 この二つの問題を解決するために誕生した技術がEoEである。

 EoE対応のLANスイッチは,MACフレームにEoEヘッダーと呼ばれる情報を付けて転送する。EoEヘッダーの先頭はMACヘッダーと同じ構造になっており,MACフレームをMACフレームで包む格好になる(図)。このように,あるプロトコルのパケット/フレーム全体をほかの(もしくは同じ)プロトコルのパケット/フレームのデータとして送る処理を「カプセル化」という。

 サービス網内のLANスイッチは,EoE用のあて先MACアドレスを見てフレームを転送する。そのあて先となるのは,サービス網の出口に位置するLANスイッチのMACアドレスである。網内のLANスイッチは,網の出口のMACアドレスだけを学習すればよい。その先にあるユーザー側拠点にある端末すべてのMACアドレスを学習する必要はない。そのため,拡張VLAN方式のサービスで使うLANスイッチに比べてアドレス・テーブルへの登録数が大幅に減る。その結果,アドレスの学習と検索における処理負荷を少なくできる。

 またEoEヘッダーには,フレームのループを防止するためにTTL(time to live)の概念を取り入れてある。これは,経由するLANスイッチの数が一定数を超えるとフレームを破棄するしくみである。こうしてMACフレームが永遠に回り続けるのを防止する。

 MACフレームをMACフレームでカプセル化する技術は,MAC-in-MACなどと呼ばれており,現在,IEEE802.1ah委員会で標準化作業が進んでいる。