日立製作所が北米市場でサーバー販売に乗り出した。サーバーやストレージ、ネットワーク機器、そして関連ソフトを一体化させた基幹業務向けブレード型サーバーBladeSymphonyで、北米市場での地位を確保するためだ。手始めに20人を配置し、OEM(相手先ブランドによる生産)を含めた販売網作りを推し進め、今後3年間で360億円(3億ドル)の売り上げを見込む。2004年度のサーバー事業の売り上げが約1200億円だったことからすると、控えめな目標といえる。

 同社の北野昌宏エンタープライズサーバ事業部長は、北米市場で事業展開する理由を2つ挙げる。1つは、日本企業のグローバル化に対応するため。海外工場建設に伴って、ユーザー企業が世界規模でのSCM(サプライチェーン管理)システムなどの構築を求めてきたからだ。もう1つは米ソフト・ベンダーの新アプリケーションにいち早く対応させるため。「ここでのテクノロジーリーダーは北米ベンダーになる。支配的なアプリケーションがいつ出てくるのかは分からないが、その動向を見ていないとまずいことになる。新しいアプリケーションが出たら直ぐにキャッチアップする」(北野氏)。つまり、国内外の境界線がなくなってきたということでもある。

 とは言うものの、日立のサーバー売り上げはほぼ横ばい状態。しかも、PCサーバーを除いた2004年度のサーバー売り上げは前年度比で29%減の947億円、2005年度上半期も17%マイナスの392億円と急速に下がっている。つまり、メインフレームやUNIXサーバーなどの落ち込みをBladeSymphonyを始めとするPCサーバーで支えているのが実情。

 日立の総売上高(約9兆円)のわずか1%強しかないサーバー事業を目立つ存在にしていくうえで、北米市場の開拓は重要な1つの策になる。「WindowsやLinuxを搭載したBladeSymphonyはPCM(互換機)に近い売り方ができる」(北野氏)ので、日立にもビジネスチャンスがある。なので、北野氏は「BladeSymphonyは年率倍々で軽く伸ばせる」と意気込む。

 2005年初めから本格出荷を開始したBladeSymphonyの引き合いは着実に増えている。既にゼンリンデータコムや北海道漁業協同組合連合会、生活協同組合連合会ユーコープ事業連合、ハンビットユビキタスエンターテインメント、霧島酒造など100社超(1500ブレード)に販売実績があり、2005年度は750シャーシ(1シャーシには最大8枚のブレードが入る)を見込む。「国内のサーバー売り上げの中で、BladeSymphonyをはじめとするブレード・サーバーは約10%だが、2年後に半分以上に引き上げる」(北野氏)。

 最もニーズが高いのが複数のPCサーバーの統合だ。「この数年間、PCサーバーは猛烈な勢いで設置台数を増やした。それがいつまでも続くとは考えられない。PCサーバーのコンソリが最大のターゲットになる」(北野氏)。そのためにも、部品点数の削減による信頼性向上や性能向上、仮想化技術、ブレードの高密度化などを図る。現在は10Uに8枚のブレードを収納できるが、例えば倍の16枚を収納させるとか、5Uに8枚を収納させるといった小型化、薄型BladeSymphonyも計画している。なのでエンタープライズサーバ事業部の1000人超の技術者をPCサーバー、とりわけBladeSymphonyに集中的に投入する考えだ。

 BladeSymphonyはプロセッサにインテルのXeonあるいはItaniumを採用し、2CPU構成、4CPU構成があるので、複数のブレードを開発する必要がある。加えて、小型や薄型のBladeSymphonyも開発するし、ブレードをベースしたスーパーコンピュータの開発にも取り組んでいる。日立サーバー事業の成長のカギはブレード・サーバーにあるということだ。