2005年9月中間期決算の業績からは、ITサービス業界の業況回復と、特に中堅以下のソリューションプロバイダの好調さが見て取れる。利益重視への努力がようやく実を結び、2006年3月期の経常利益は2ケタ増となる見通しだ。




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表1●株式を上場しているソリューションプロバイダ114 社の2005年9月中間期決算
 2006年3月期決算の中間期決算で発表した前年度売上高10億円以上のソリューションプロバイダ114社の業績を本誌がまとめた。その結果、前年度同期と比較可能な109社のうち、増収増益(黒字転換や赤字縮小を含む)を達成した企業は49社と45%に達し、前年の41%を上回った。減収減益(赤字転換や赤字拡大を含む)の企業は17社と16%で、前年の25%を大きく下回った(表1[拡大表示])。

 UBS証券株式調査部の佐藤博子シニアアナリストも、「IT業界にようやく光が差してきた。緩やかだが業況は回復している」と断言する。通期の予測では、ITサービス業全体で売上高は4.1%増、経常利益は16.7%増となる見通しだ。

 特に、クレディスイスファーストボストン証券株式調査部の福川 勲アナリストは「受注量の回復により単価下落が収束し、中堅以下のソリューションプロバイダの業績が伸びている」と指摘する。実際、中間期の売上高100億円以上の企業52社のうち増収増益は29%の15社なのに対して、100億円未満の企業57社は、60%の34社が増収増益となっている。前年同期は、それぞれ55%、36%で売上高100億円以上の企業の方が増収増益企業が多かったのが、今期は完全に逆転した。

 中間期の売上高上位30社に限って見ると14社が減収で、増収増益はわずか8社と3割に満たず、好調とは言いがたい。ただし、減収14社のうち9社が増益で、特に伊藤忠テクノサイエンス(CTC)は減収ながら、売上高総利益率が上場以来最高の25.1%となった。これは、大手の間でようやく利益重視の経営へ転換が図れたことを示す。事実、「案件が増えたことで、利益率の低い案件を無理に取りに行く必要がなくなった」(インテックの宮地秀明社長)と説明する企業は多かった。その結果として、多くの企業が不採算案件の数を前期より減らしている。

 もう1つ、景気回復を裏付ける動きがある。中間決算で各社が口をそろえる「人手不足」である。電通国際情報サービス(ISID)の瀧浪壽太郎社長は、「金融および製造業向けの案件が好調だが、技術者が足りずに売り上げを伸ばしきれなかった」と語る。

CSKは大幅減益も強気の姿勢

 売上高上位の顔ぶれは、1位がNTTデータ(3896億500万円、同2.0%増)。これに、ダイワボウ情報システム(1742億7300万円、同2.2%増)、日本ユニシス(1345億2800万円、同3.2%減)、野村総合研究所(1325億200万円、同15.1%増)、NECフィールディング(1114億1300万円、同5.8%減)などが続く。前年度売上高2位だったCSKホールディングス(1109億8500万円、同36.9%減)は6位に順位を下げた。

 NTTデータは、法人分野での売り上げ拡大、連結対象子会社の増加などで増収を維持。特に、金融機関除いた法人分野の売上高は前年同期比32.0%増となった。成長を支えた施策として、業務ノウハウやコンサルティングスキルを備えた人員約110人を採用して営業・開発力を強化したことや、積水化学のシステム子会社などを連結子会社化したM&A(企業の合併・買収)などを挙げる。

 増益企業が多い中で、前期に絶好調だったユニシスとCSK、TISの大幅な減益は際立っている。ユニシスは売上高で前年同期比3.2%減、営業利益同86.8%減、経常利益同87.4%減。CSKは前年度中間期には営業利益、経常利益、純利益のすべてが最高益を更新したが、今期は売上高前年同期比36.9%減、営業利益同45.0%減、経常利益同43.4%減となった。TISは、売上高こそ前年同期比1.7%減に踏みとどまったものの、営業利益同50.2%減、経常利益同48.9%減と利益が半減した。

 ユニシスは、米ユニシスに支払う商標使用料を一括計上したことで24億円の負担増となり利益を減らした。本業ではメインフレーム関連ハード/ソフトが大幅に売り上げを減らし、さらにオープン系サーバーの不振が加わった。

 CSKの減収減益は、ベルシステム24(東京都豊島区、園山征夫社長)やネクストコムの連結除外のほか、同社が戦略的事業分野と位置付ける金融とコミュニケーション、ヘルスケア分野への先行投資による影響が大きい。同社は5月に、この3分野に1300億円もの投資を集中することを発表し、すでに一部投資を開始している。ただし、「下半期は、戦略事業の一部でビジネスモデルを構築できるメドがついた。通期業績は売上高は前年度同期比で21.9%減るものの、経常利益は12.2%上昇し、純利益は過去最高になる」(CSKの鈴木孝博取締役)と予想する。

 TISの利益が半減した要因は、大型プロジェクトが不採算に陥ったことである。本体では、製造業とサービス業向けのシステム開発案件で、25億円にも及ぶ損失を出した。さらに、今年4月に旭化成から買収し子会社化した旭化成情報システム(東京都墨田区、大関大喜社長)も、大規模な不採算プロジェクトを抱えており、それが顕在化したことも響いた。