金融機関の顧客がスパイウエアによって個人情報を盗み取られた事件が大きく報道され、それを契機にスパイウエア対策に大きな関心が集まるようになった。2005年夏以降、企業向けの対策製品やサービスも相次いで登場し、市場が急速に立ち上がってきた。



 インターネットバンキングの顧客のIDなどが盗まれ、不正に預金が引き出された事件などで、2005年は“スパイウエア”が世間を騒がせた。スパイウエアは、インターネットやCD-ROMからパソコンにインストールされて無関係なWebサイトを表示したり、個人情報を第三者に送信したりするプログラム。マーケティング目的のものもあるが、悪意のある不正プログラムも少なくない。

 最近では一般の企業からもスパイウエアを警戒する声が出るようになった。個人情報など企業内の重要情報が漏洩する恐れがあるだけでなく、業務に無関係なWebサイトが立ち上がったりすることによって、社内の生産性が落ちる恐れもあるからだ。米調査会社ラディカティ・グループによると、全世界の企業向けスパイウエア対策ツールのユーザーは2009年には5億4000万人強(2005年の33倍強)、市場規模は10億ドル(2005年の10倍)を超える見通しだ。

専用の対策製品が急増

 新市場の立ち上がりを象徴するように、国内でも今年はスパイウエア対策ツールが相次いで市場に投入されている。その1つが、最新の定義ファイルを更新して、クライアントPCに侵入したスパイウエアを検知、駆除するクライアント対策型の製品だ。

 コンピュータ・アソシエイツ(CA)は、2005年6月にeTrust PestPatrol Anti-Spyware Corporate Edition r5.0.2を発売した。スパイウエア専門の研究施設「スパイウェア情報対策センター」から、最新のスパイウエア情報をユーザーに提供する。2006年1月から、エンジニアが企業内に侵入したスパイウエアを診断するサービスの提供も開始する予定だ。

 アスキーソリューションズは、スウェーデンのニコラス・スターク・コンピューティング社が開発したAd-Aware SE Enterprise版(英語)を2005年7月から販売している。Ad-Aware SEの無償版は、全世界で約1億6000人のユーザーを抱えており、世界的な知名度を武器に売り込む。2006年1月には日本語版を発売する計画だ。今後はパートナー会を開催し、パートナーに有望なセキュリティ商材として浸透させたい考えだ。

 ウイルス対策ソフトベンダーでは、ウイルス対策ソフトにスパイウエア対策機能を追加する動きが活発になってきた。同時にウイルスとスパイウエアの対策ができる点を売り込むわけだ。例えばシマンテックは、今年5月に発売したSymantec Client SecurityとSymantec AntiVirus Corporate Editionの最新版で、スパイウエアをリアルタイムに検出、駆除できる機能を追加した。シマンテックの生内眞司プロダクトマーケティング部マネージャは、「セキュリティのソフトをいくつも入れると、それだけ運用が大変になる」と、1つのパッケージ製品による運用管理面でのメリットを強調する。