図 新たな帯域を追加することで上りも最大100Mビット/秒に
図 新たな帯域を追加することで上りも最大100Mビット/秒に
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 電話線を使う高速ディジタル伝送技術の一種。ブロードバンド・サービスに使われているADSL(asymmetric digital subscriber line)と同様,電話用の銅線ケーブルに電話と相乗りして高速のデータ伝送を実現する。マンション向けFTTH(fiber to the home)で棟内の通信によく使われている。伝送距離は短いが,下り方向で最大100Mビット/秒,上りで最大35M~40Mビット/秒と高速の伝送速度を実現する技術である。

 上り方向の伝送速度が下り方向の速度よりも低いのは,ITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化セクター)が決めたVDSLの国際規格「ITU-T勧告G.993.1」などで,VDSLの通信に使う電気信号の周波数帯域のうち,下り用の周波数帯域よりも上り用の帯域のほうが狭かったからである。VDSLもADSLと同様に,下りに比べて上りが遅かったのである。

 そこで,VDSLの速度を100メガ・イーサネットと同じ上り下りとも100Mビット/秒に高速化するために,ITU-Tは最新のVDSL規格「G.993.2 Annex C」で上り方向の通信に使う帯域を追加した(図)。すでに,この新規格に準拠したVDSLモデムの出荷を始めた装置メーカーも出始めている。

 ただ,VDSLの伝送速度は伝送距離が長くなるほど低下する。とくに上り方向は減衰しやすい高い周波数帯域を使うので,速度が低下しやすい。モデム・メーカーの住友電工ネットワークスによれば,200mまでは下り方向の速度で100Mビット/秒を保てるが,上りは半分まで速度が落ちるという。