図1 テレビやFM放送を楽しめる携帯電話機が登場<BR>KDDIが7月15日に発売した三洋電機製の「W32SA」。テレビやFMのアナログ放送を視聴でき,さらにその放送を録画・録音できる。このほかにもさまざまなマルチメディア機能を搭載する話題の製品である。
図1 テレビやFM放送を楽しめる携帯電話機が登場<BR>KDDIが7月15日に発売した三洋電機製の「W32SA」。テレビやFMのアナログ放送を視聴でき,さらにその放送を録画・録音できる。このほかにもさまざまなマルチメディア機能を搭載する話題の製品である。
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表1 比較した三洋電機製携帯電話機の仕様&lt;BR&gt;通話時間や待ち受け時間といった携帯電話の基本機能はあまり変わらないが,マルチメディア機能がどんどん増えている。
表1 比較した三洋電機製携帯電話機の仕様<BR>通話時間や待ち受け時間といった携帯電話の基本機能はあまり変わらないが,マルチメディア機能がどんどん増えている。
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携帯電話機の進化は止まらない。最新の携帯電話機は,テレビ放送やFM放送を視聴することまで可能になっている。こうした携帯電話機の中身はどうなっているのだろうか。今回は,めったに見られない携帯電話機の内部を徹底的に調査する。

 「おい,このケータイすごくないか。テレビが見られるし,FM放送も聞けるらしいぞ」。こう言ってデスクが持ってきたのは携帯電話機のカタログだ。そこに大きく載っているのは,7月15日に発売されたau(エーユー)の最新機種「W32SA」である(図1[拡大表示])。

 「今使っているのはかなり古いんだ。そろそろ買い替えようかな」と言いながらデスクが取り出したのは,ストレート型の年代物。「うわ。さすがにそれはないでしょう。少なくとも大画面の折りたたみ型じゃないと」と言いつつ,3年前に買った自分の携帯電話機をひけらかす。

 「そんなの自慢にならんよ。カタログの最新機種に比べれば雲泥の差があるだろう。でもデザインだけ見ると確かに似てるな。一体何が違うんだ?」とデスクが質問で切り返してきた。

 「そりゃ中身が違うんじゃないですか。そう言えば,携帯電話の中身ってどうなっているんでしょうね? “最新ケータイの中身”って『調査隊』のテーマにいいんじゃないですか」。

 「確かに面白そうだ。携帯電話機の中身を見る機会はめったにないからな。よし,じゃあ最新ケータイを徹底的に分解してみるか」。

機能を詰め込めるだけ詰め込んだ

 とは言っても,素人が携帯電話機を勝手に分解するわけにもいかない。ここは,やはりメーカーに携帯電話機の中を開けてもらうほうがいいだろう。そこで,W32SAの製造メーカーである三洋電機を訪れた。

 実際にW32SAを分解してもらう前に,まずは簡単にこの製品の機能をブリーフィングしてもらうことにした。

 「W32SAには,現在,携帯電話機に搭載できる機能をすべて詰め込みました」。そう自慢げに説明するのは,W32SAの開発リーダーを務めた江上 剛(えがみ つよし)さんだ*

 W32SAは,2.3型QVGA*のメイン・ディスプレイとステレオ・スピーカを前面に備える。この画面とスピーカを通して,豊富なマルチメディア機能が楽しめるようになっている。

 目玉機能は,アナログ地上波のテレビ放送を視聴できること。UHFとVHFの全域,1~62チャンネルをすべて受信できる。加えて,FMラジオも楽しめる。これも76M~108MHzにある全チャンネルが受信可能である。

 さらに,受信したテレビ放送を録画したり,FMラジオを録音したりもできる。録画時間は最大で約40分,録音時間は最大で約60分である。

 携帯電話機で音楽を購入しダウンロードして聞けるサービス「着うたフル」もサポートしている。さらにこの携帯電話機は,音楽をFM波で送信する「FMトランスミッタ」と呼ぶ機能を備える。この機能を使えば,カー・ステレオなどのFMチューナに受信させて,携帯電話機の音楽を再生できるというわけだ。

 通信機能に目を向けると,下りの最大伝送速度が2.4Mビット/秒の「CDMA 1X(ワンエックス) WIN(ウィン)*」に対応し,EZweb(イージーウェブ),EZアプリ,EZムービー*などが使える。テレビ放送と通信を連係させた使い方もできる。例えば,テレビ番組中に流れる曲の情報を取得し,その曲を着うたフルでダウンロードすることも可能だ。

古い製品と比較する

 最新機種のW32SAだけを見ても,以前に比べてどのくらい変わったのかを実感しにくい。そこで,古い機種も合わせて合計3機種を一緒に分解してもらい,比較することにした(表1[拡大表示])。

 一つは,1999年に発売された「C104SA」。三洋電機が製造したcdmaOne(シーディーエムエーワン)*向け第1号機である。マルチメディア機能は備えておらず,機能をほぼ通話だけに限った製品である。メイン・ディスプレイはモノクロで,画素数は72×48しかない。

 もう一つは,2000年に発売された「C401SA」。同社初の折りたたみ型製品で,約200万台も売れたヒット商品だという。C401SAは,ディスプレイがカラー化され,画素数も120×160と大きくなった。そして,マルチメディア機能も搭載された。しかし,その種類はそれほど多くなく,EZwebや内蔵の独自ゲーム,3和音で作曲することぐらいだった。

 このように機能面から見ると,最新機種のW32SAと,かつてのC104SA,C401SAの間には大きな隔たりがある。当然その中身も違うはず。どれくらい異なっているのだろうか。